目に見えない「裏」側の出来上がりが「表」側以上に大切な事_NARIHIRA RECEPTION_140507

一般的に、建物を作る工程としては、外装(屋根,壁、開口部)の工事が完了してから内装工事に取り掛かります。これは、室内への雨水浸入を止めるためです。内装工事に使う材料は、水廻りを除いて、基本的には水に浸る事を前提としていません。すなわち「外部からの水は外装材で防ぐ」事が求められますので、まずそのような状態が確保されているかの確認が必要になります。前回のテーマでご説明した「ALC」の外壁施工を追う様に、サッシの取付が進んで行き、屋根の防水と併せて、雨水浸入のない内部空間が確保されるようになります。

特に異なった素材が隣り合う時には、水の浸入対策を十分に考慮する必要があります。万が一、水が浸入した際には適切に排水される様な機構が施されているか、また排水機構が何らかの不具合で機能しなくなった時の2重3重の対策が講じられているかは、設計、製作段階でも十分な検討が必要です。これらが無事に施工された後に、鉄骨造に必要かつ重要な工程へと進みます。

鉄骨造の骨組みとなる「鉄」そのものは高温の加熱には決して強くありません。万が一、建物が火災に見舞われた時には、火炎が「鉄」の表面に直接触れない様に熱を遮断する何かで覆う必要があります。これを専門用語で耐火被覆というのですが、ある程度の規模を越えた鉄骨造の建物の主要な鉄骨構造部はこれで覆われます。「鉄」は火災時の高熱にさらされると、当初から見込んでいる構造上の能力を発揮し続ける事が困難になり、建物を支える力を保てなくなることから倒壊する恐れがあります。この倒壊するタイミングをできるだけ遅らせ、消火活動の時間を確保し、火災発生を知らされた人が屋外へ避難する猶予を稼ぐ事が、耐火被覆を行う大きな目的の一つです。建物が完成に近づくと、多くの場合、耐火被覆は仕上材の中に隠れてしまい目に触れる事はありません。有事に際に建物の安全を確保するためにも、建設中のしっかりとした施工とチェックが求められます。具体的には、被覆が必要とされる「鉄」の表面がもれなく覆われている事と、被覆材種類、被覆厚さの管理になります。これに関しては、後日に詳しく記したいと思います。

錆止めの赤い鉄骨フレームに吹付けられているグレーの素材が耐火被覆になります。

全体の工事としては、それと並行して建物内を上下するための階段、エレベーター設置の作業が進んでゆきます。施工中に関してはいえば、特にエレベーターは上階への資材運搬にも使う事ができるので、仮設的に運用する事が多いため、工期内の早い段階での設置を行う事が多いです。もちろんお施主様の了解と傷が付かない様にする養生、引渡前の全面クリーニングを行う必要がありますが、早めに稼働できれば、それだけ作業効率も上がる事につながり、現場の効率は非常に上がります。この様な理由から内装工事に先立ちエレベーターシャフト内の工事は、カゴの設置に向けて工事は着々と進んでゆきます。日頃からEVに載る事はごく普通の事だと思いますが、EVシャフトと呼ばれる縦に抜ける筒状の空間を実際に見る事はあまり無いかもしれません。建物が完成すれば日常的に乗降の機会が多くなるEVも、カゴを支えるレールや電装機材、巻上げ機構等がこのシャフトの中に納められており、目にする事はありませんが非常に重要な部分になります。このレールがいかにまっすぐに歪みなく垂直に設置されるかが、EVのスムーズな動きや異音の発生を抑える事になります。何事も裏側に隠されている仕事の数々が大きな意味を持っている事を改めて感じる次第です。

EVシャフト内部の壁仕上が完了した様子。この後、レールや乗場扉の設置などさらに工事は続きます。

壁・床に使う素材で鉄骨フレームのコストが変わる_NARIHIRA RECEPTION_140407

鉄骨架構が組み上がるのを追いかける様に、床、壁の施工に入りました。

一般的に鉄骨造の外壁として使われる材料はALC板です。これは、コンクリートの中に空気の小さな粒を混入させてパネルにした物です。特徴としてはコンクリートより軽量なため、外壁の重量を抑える事が出来るので、それを支持する架構の鉄骨量を軽減できる効果があります。但し、コンクリートに比べると撥水能力が落ちる為,何らかの表面仕上を行い、雨水の浸入を防ぐ必要があります。

今回の計画の特徴としては、このALC板を床材としても使用している所です。多くの場合、床はデッキプレートを敷き、その上に鉄筋コンクリートの床を打つという工法になります。ALCの床は最終的には、架構の鉄骨量を抑える事(約5%)ができました。数字としては微々たるものですが、鉄骨だけでも数千万となると・・・・結構なインパクトとなり、最終的な建築コストに対しては結構な減額効果を生みます。

追記170623:最終的にALC板を使用したのは外壁と室内の各フロアの床下地になりました。建物の最上部にあたる屋根部分に関しては、現場で鉄筋コンクリートを打設しました。ALCパネルを使った屋根下地で作る事も可能ですが、パネル間のジョイントがあるという事は、微小ではありますがパネル相互間に動きが生じる可能性が予想されました。それを覆うアスファルト防水層(雨水浸入を抑える最も大切な部位)の劣化や亀裂を生じさせるような「経年変化」による漏水リスクを出来るだけ少なくするため、より密閉度の高い「板」を作れる、現場施工による鉄筋コンクリートを採用しました。当然、その部位に関しては、建物の重量は増すのですが、性能を担保すべき部分にコストを少し振り向けるメリハリの付け方は、とても大切な事と考えております。

鉄骨工事の完了を受けて上棟式を行いました:NARIHIRA RECEPTION_140307

この投稿は建築家31会のブログリレー「ばとろぐ_2014/09/01」を一部加筆したものです。

今週、担当致します石川利治です。以前のばとろぐでもご紹介させて頂きました、2012年3月に行った31人展vol.4でお知り合いになったS様と進めております[NARIHIRA RECEPTION]という案件のご報告を中心に進めて行きたいと思います。1週間、宜しくお願い致します。

前回もご紹介した通り、現場での鉄骨建て方は、約3日で建物の全体像が見える状態になりましたが、実際には仮組(かりぐみ)の状態にありました。ここから、建物の水平、垂直の精度を上げる「建て入れ直し」を行った上で,接合部を完全に固める「本締め(文字通りボルトを締める作業)」を行います。これに、附属パーツでもある、階段等を取付、鉄骨工事の全てを終える事ができました。長い仕込みの期間が形となり、骨組みの最も高い箇所まで立ち上がった事を受けて,上棟式を行いました。ひとつの区切りを迎えられた悦びと、ここまでとこれからの工事の無事を祈って、改めて現場が一体となることができました。

骨組みを下から見上げることのできる貴重なタイミングでの1枚

鉄骨造の骨組み製作の流れ:NARIHIRA RECEPTION_140217

この投稿は建築家31会のブログリレー「ばとろぐ_2014/04/04」を一部加筆したものです。

現場作業によって建物が組立てられてゆく鉄筋コンクリート造に対して、鉄骨造は工場加工での製作が大半を締めます。事前に行う製作図(鉄骨全体の組方から柱、梁などの各パーツをどのように作るかを細かく図示したもの)での検討、確認といった”机上での詰め”が現場での仕上がり具合に大きく作用します。いわゆる前もって行う「仕込み」が非常に重要という訳です。

多くの鉄骨部材は、完成時には目に見える「表」の仕上の「裏」に隠れてしまうのですが、いかに破綻無く骨組み組むかが大切になります。シンプルな構成の建物であれば、骨組みもそれ程、複雑にはならないのですが、今回の計画では、建物形状が台形であったり、床の段差や吹抜けが内包されていたりと、調整事が盛りだくさんな感じでした。

最終的には見えない所へ隠れてしまう鉄骨ですが、鉄そのものが実際には仕上として現れてくる部分もあります。階段、バルコニーなどがそれにあたるのですが、鉄が最終的に形として現れてくる事になるため、骨組みを決めるタイミングと併せて、完成形を決めきる必要があります。ここで難しいのは、本来は「裏」に隠れている鉄骨が、何らかの形でそれを囲んでいる仕上を突き抜けて「表」に出て来る事です。その貫通部分がどのように奇麗に取合っているか、また雨が掛かる所であれば、雨漏りの原因になっていないかなどの性能面においても慎重に対応策を検討する必要があるのです。まだ骨組みが現場に立ち上がっていない初期の段階で,最終的な仕上状態を予想して、鉄の形を決めなければならないという切迫感・・・・毎度、結構なプレッシャーになります(汗)。

そんな、「仕込み」を経て、形のまとまりがついた所で工場製作に入ります。この段階で、今まで図面上で検討していた”空想のもの”が、”現実の物”として出現して来ます。これには、なかなかテンションが上がるのですが、実際は(本当に大丈夫かなぁ・・・)という不安も半分です。

折を見て、製品検査を行い、製作物を確認する作業を行います。今回は埼玉県の製作工場に出向きました。製品の精度と共に、接合部での溶接の状態等、順次確認を行いました。

製作工場内での製品検査の様子。柱部材も床に並べられると、その大きさに驚かされます。
柱継手の加工状況。先端を斜めに削り(開先といいます)現場での溶接の仕込みがなされています。
超音波探傷試験の様子。溶接部分の不具合が無いか確認を行います。

検査も無事に終了した後,いよいよ現場での建て方に移ります。次々にトラックで到着する部材をクレーンで組上げてゆきます。各部材は、概ね高力ボルトという、ネジの親玉みたいな部品でジョイントしてゆき、火花を散らす様な溶接は殆ど使いません。現場での作業効率と組立精度を上げるための永年のノウハウによって、鉄骨造の施工技術が蓄積されている部分といえます。

概ね、3日間で全体の骨組みが立ち上がりました。この数ヶ月間の仕込みが形として現れてくる様子は、やはり感慨深いものがあります。

鉄骨建方が進行中。工場で確認した柱継手部分が接合されています。
骨組みの全体像が組み上がりました。

仕上材料の確認作業はどのように進めるか:NARIHIRA RECEPTION_140117

この投稿は建築家31会のブログリレー「ばとろぐ_2014/04/03」を一部加筆したものです。

仕上(しあげ)材料をどういったものにするかは、性能もさることながら、その空間の雰囲気を作る上で,非常に重要な要素となります。建築家によって、そのアプローチの方法は様々だと思いますが、最終的に仕上材料を決定する上で、重要になるのが、サンプルを元に働かせる想像力です。

建築で使用する殆どの材料は、実際に施工する前にサンプルを取り寄せる事はできるのですが、大きさには限界があります。それこそ、実際に使用するサイズに限りなく近い大きさのサンプルを貰えれば良いのですが、殆どの場合はA4サイズ程度で、場合によるとサンプル帳の一部、せいぜい5センチ角のチップサンプルで、色柄の判断を行う事を求められるケースがあります。

実際の所、このチップサンプルで空間全体を想像する事は、正直出来ませんし、私にはその勇気も才能もありません・・・(笑)。とりわけ、柄のある材料は、大きな面積の中で、どのように見えるかの確認を行う様にしています。特に、最近の大判タイル等は、プリント技術が進化しており、同じ商品でも色幅、模様のバリエーションを幾つも用意しているため、複数枚を並べた状態を確認する必要性を感じます。多くの場合、ショールームで事たりますが、場合によっては、足を運べる範囲で同じ材料を使った事がある案件を紹介して貰い、見学する事もあります。

そんな訳で,今回は先行発注が必要なエレベーターの仕上を決定するために三菱EVのショールームにお邪魔致しました。こちらは実際のカゴの大きさで仕上を確認する事ができ、チップサンプルではイメージが困難な色柄の全体像を掴む事ができました。

ショールームのカゴ内サンプル。壁材は折りたたみ式で取替可能!なシステマチックな展示でした。

当初に考えていた単色の壁仕上も、実際の壁面サイズで確認すると”のっぺり”としてしまい、今回の建物全体の内装仕上との相性からも、柄の入った仕上に考え方を改める事になりました。実際に目で見て、手で触る事の大切さを改めて感じた次第です。

最終的な仕上の組合せ。床材は濃い色としました。

次に同素材の検討を行う時には、今回のイメージを元に選ぶ事も可能かもしれませんが、最終の出来上がりの状態との誤差を出来るだけ小さくできる様に、これからも丁寧な確認作業を積み重ねて行いたいと思います。

実際のボタンやインジケーターも確認できます。