「アーバンリゾートシェアハウス by ㈱空間計画提案室」来訪記

建築家31会のメンバー、㈱空間計画さんが手掛けられた「アーバンリゾートシェアハウス」のオープンハウスにお邪魔して来ました。代表の鈴木さんのSNS上で工事中から完成までの様子は写真で拝見しており、住宅しては非常に規模の大きい案件という事で注目しておりました。

敷地は東京都との県境にほど近い埼玉県八潮市でした。この辺りは筑波エクスプレスの開業によって開発された地域という事で、道路や家が新しく、街区は伸びやかな区割りが行われており、さらに今後も新たな道路が作られているようです。土地の起伏はそれ程無く、さらに開発が進む余地があり、これからも人口が増えてゆく気配が感じられました。

街が新しいと感じたのは,いわゆる新建材を使った住宅や共同住宅が多く建っていた事によって感じた部分が大きかったのですが、そんな中にひときわ存在感のある素材と水平に伸びる屋根をもったガラス張りの建物が・・・今回お邪魔する「アーバンリゾートシェアハウス」でした。

広大な敷地の一角に車を停めたのですが、ガラス張りの建物のため、到着と同時に代表の鈴木さんとスタッフの方にお出迎え頂きました。写真では何となくその大きさをイメージしておりましたが、実際に訪れてみると、その空間のゆったりとした大きさに驚きました。プロジェクトのネーミングから「シェアハウス」を予想していたのですが、実は鈴木さんのご親族の方がお二人で住む(実際にはOfficeの一部としても使われるそうです)との事で、さらに驚きに追い打ちを掛けられました。

建物の構成としては、5つの直方体が通路となる隙間をもって並べられており、そこに大屋根が掛けられ、ガラスで室内と外部が切り分けわれています。直方体は個室や水廻りや収納などの機能が内包されており、それぞれの壁仕上も異なった素材で覆われていました。この壁仕上はガラスで切り分けられた内部と外部でも同じ素材で揃えられており、直方体で構成されている事がより強調されています。また、素材を変える事により空間に彩りが与えられているのと同時に、多彩な素材のトーンはコントロールされているのが感じられ、不思議な一体感を生み出していました。直方体の配置は整然と並べ過ぎず、かといってランダムになりすぎない絶妙なバランスが取られており、建物の長手方向では箱の連続感が奥行を生み、短手では箱の隙間で内部から外部にガラスの仕切だけで切り替わる明快さがありました。

長手方向の素材が異なる直方体のならび
短手方向の抜け感

直方体の上は床が設けられ、各箱体同士をブリッジつないだギャラリーとなっていました。頭すれすれの天井高で大屋根の全景が感じられる空間は面白く、建物の構成を最も感じる事ができる場所でした。

2階ギャラリーからの眺め 中央の白いキッチンは31会協賛会のマードレさんによる製作

大屋根の下はガラスの大開口により明るい光が差込み、外部空間に居ると錯覚する様な気持ち良さです。そんな開放的な空間と対峙する様に、各直方体の内部はより濃密な作り込みがなされていました。和室の目の覚める様なオレンジ色の壁、トップライトを巧みに取入れた心地よい浴室等、個々のシーンの切替もさる事ながら、細かなディテールに至るまで、鈴木さんを始め、スタッフの皆さんが注いだエネルギーを非常に感じ取る事ができました。

 

和室

周りの建物から十分な離隔が取られた敷地に呼応する伸びやかな全体形の中に展開される作り込まれた大小の空間。それぞれが対峙しながらも呼応するかの様な全体をつなぐバランス感覚など、とても勉強になりました。鈴木さん、スタッフのみなさん、ありがとうございました。

 

「カドノイエ by コネクト一級建築士事務所」来訪記

建築家31会のメンバー、コネクト一級建築士事務所さんが手掛けられた「カドノイエ」のオープンハウスにお邪魔して来ました。ご夫婦で仕事をされているコネクトさんとは31会でも懇意にさせて頂いております。お知り合いになってから随分と経ちますが、実作を拝見するのは初めてでした(すみません・・・)。

敷地は北区の住宅街の角地でした。コンパクトな敷地の平面形状は台形をしており、その底辺の鋭角部分が角地の先端で削られていました。オープンハウスの折には、その模型を展示してありましたので、全体形状が把握できました。模型からは、道路斜線によって制限を受ける中で屋根形状と屋外デッキを匠に組み合わせ、床面積の確保と採光、使い勝手が立体的に解決されている事がうかがえました。各階の構成は、1階がご夫婦の寝室と水廻り、2階はリビング、ダイニング、キッチンと屋外デッキ、3階はロフト付きの子供部屋になります。

異なったメーカーの器具を組み合わせたダイニングテーブル上の照明器具

家族が集まる2階は間仕切りが無い、ワンルームで構成されており、四角形を組み合わせた平面形状になります。リビングとダイニング間には2段程の高低差が付けられており、緩やかなシーンの切替えがなされていました。キッチンの作業台面、ダイニングテーブルといった机上面に意識が向くエリアは、比較的天井高さが抑えられていますが、段を上がったリビングは勾配天井によって気積が一気に広がり、側面の大開口とあわせて、屋外的な明るさが生まれていました。リビングに置かれる座面を低く抑えたソファに腰掛ける事によって、この空間の上への広がりがさらに強調されるであろう事が予想されます。また、ダイニングチェアに腰掛けた時の目線とソファ上の目線がより近しい高さとなり、コミュニケーションも容易に図れるように感じました。

ルーバーの外観

屋外デッキはリビングとキッチンの両方に面して設けられています。リビング側には先程の大開口で繋がっており、キッチン側は機能的な出入口が設けられていました。このデッキ部分は前面道路に面しており、目隠しルーバーが設置されており、通風を確保しながら周囲からの視線を上手く遮っています。また、この屋外空間は1階では坪にはとなり、寝室、洗面、浴室と接しており、採光と通風が確保されていました。この屋外空間が、敷地全体が内部空間から上手く利用できる仕掛けとなっているため、コンパクトな敷地が最大限に活かされている事を感じました。

子供部屋の小窓からリビングを見下ろす
子供部屋の小窓から顔を出す滝川さん

3階の子供部屋にはリビングの吹抜けに面して小窓が設けられていました。こんな所にも家族の繋がりを大切にするお二人の設計姿勢を感じる事ができました。

キッチンは家事コーナーを備えた広々とした構成。家電関係はリビングからは見えない様に収納方法が計画。

コンパクトな敷地の中で、空間の有効利用と広がり感、有機的な繋がりが遊び心と同居する素敵なお宅でした。

標さん、滝川さん、ありがとうございました。

「東砂ロードサイド by アトリエハコ」来訪記

建築家31会のメンバー、アトリエハコ建築設計事務所さんが手掛けられた「東砂ロードサイド」のオープンハウスにお邪魔して来ました。アトリエハコさんはつい先頃、建築家31会にご参加頂く事になり、それを機会にお知り合いになりましたので実作を拝見するのは初めてでした。

敷地は江東区東砂の大きな通りに面したお宅でした。

外観はシンプルな白い矩形に、開口部が大小のバランスを取りながら配置されていました。その建物の前には小振りながら緑をたたえた街路樹が1本寄り添い、木陰が白い壁をスクリーンにした様に落ちているという、大通りで一際目を引く存在感がありました。

黒い扉と黒い枠のガラスが、白い壁を鋭くえぐり取る様な形で入口ができていました。中に入ると、佐野さんが迎い入れて下さりました。道路側の間口12mに対して奥行は3.5mと今までに経験した事のないサイズ感でした。入口正面は黒い壁があり、そこを回り込む様に階段が上階につながっていました。

階段を上がった先は、ダイニングキッチンで、製作物のキッチンが据えられています。レンジフードはカウンター内からせり上がってくる物が組込まれており、ステンレス製のセンターキッチンの存在感を邪魔しません。ひときわ大きなガラスからは、先程外部から見た街路樹が見えます。これはたまたまここに立っていたそうです!また、前面道路の幅員が広く(19m)、開口部も延焼ラインから外れていたため、大きな透明ガラスを入れる事ができたとの事。敷地の良さを最大限に活かした計画となっていました。

ダイニングの上は吹抜けていました。吹抜けの両側にも開口部が設けられており、陽光がたっぷりと注ぎこむ、とても気持ちの良い空間です。

階段側を振り返ると、建物の真中に黒い壁があります。この黒い壁は箱状になっており、建物の外壁の中に、入れ子の様に内包されています。その周りを階段が取り囲み、箱を挟んだ両側がスキップフロアになっている構成でした。階段は、段板だけが壁の間に挟まっており、向こう側が見通せます。

この箱と階段がある事で、奥に何かが続いているといった感覚が生まれ、細長い建物形状の長手の奥行間がより一層、強調されていると感じました。

入れ子の黒い箱は、所々に開口が開けられ、上下階をつなぐ開口や、籠もり部屋(最近よく出会います-笑-)になるなど、空間の繋がりがとても工夫されており、それが広がりと明快さの中に複雑さを加え、建物内部の面白をさらに生んでいました。

七島さんからお伺いしたお話しでは、お施主様は内装業をされている方と云う事でした。お施主様のお仕事の仲間で内装工事が行われ、細かな納まりを相談の上、施工されていったとの事でした。特に巾木納まりは、アルミのアングルがフローリングから10ミリ程浮いた位置で止まっている納まりで、内装工事の難しさが予想されるのですが、大変奇麗に納まっていました。また、内部の壁はPBボードに塗装がなされていたのですが、その仕上がり精度が高く、横方向から壁をなめる様な光にも不陸による影が出ず、平滑に仕上がっている事が判りました。職人さん達の仕事へのこだわりを大いに感じた次第です。

空間のデザインと構造フレームの高い次元での融合と、現場を進めて行く中で思いついたアイデアを柔軟に取り込み咀嚼する「物づくりへの取り組み」など、大変に刺激と勉強になりました。七島さん、佐野さんありがとうございました。

「都市でも気持ちよく住まう家 by有限会社 菰田建築設計事務所」来訪記

建築家31会のメンバー、有限会社 菰田建築設計事務所さんの手掛けられた「都市でも気持ちよく住まう家」のオープンハウスにお邪魔して来ました。

ご夫婦で手掛けられる菰田さんの建築は写真や模型では拝見しており、丁寧な作り込みには感心しておりましたが、実際の建物を体験するのは初めてだったので、期待に胸を踊らせて伺いました。

敷地は三軒茶屋の交差点からほど近い所で、国道246号線沿いのビル群を背景にした細い路地が続く住宅街の中にありました。大通りが直ぐ近くなのですが、通り沿いのビル群が屏風の様に建ち並んでいるおかげで、通りの喧騒はあまり届いてこず、思いがけない程の静けさがありました。

白と自然木を基調とした外観は飾り気を排したシンプルな潔さでまとめられています。外回りをうろうろと拝見していると、菰田さんが玄関先で出迎えてくれました。

路地をくぐる様にして玄関扉を抜けて繋がるシューズクローゼット周りを土足のまま進むと、天井が高くなり、側壁の開口から取られた柔らかい明るさを持った広がりのある土間空間に変化します。この土間が1階を端から端まで貫き、そこに直接面した形で子供部屋がありました。土間と部屋の間には壁や扉が無く、腰掛けの高さに設定された床段差が縁側的なイメージも与えます。まだお子さんが小さいため、あえて間仕切り壁などは設けず、将来的には分割を行なえる様なフレキシブルな平面形状と、設備の増設に対応した仕込みは行われているという、練り上げられた空間でした。小学校に上がる頃には、友達がたくさん集まっても大丈夫であろう広がりのあるワンフロアの遊び場が想像できました。

階段を登った2階はリビング、キッチンがある生活の中心フロアです。

大きく取られた開口から入る光と、間仕切りを極力排した間取りにより、室内の広さが感じられます。登ってきた階段を振り返ると、3階への階段は壁からスチールの支柱で支えられた、軽やかな踏み板が壁から跳ね出しています。部材の細さが軽さをさらに強調しており、上から落ちて来る光と絡み回転しながら上昇感を生んでいました。構造的には階段外周の壁内部に段板の支持部材が埋め込まれ隠さており、壁からは細い部材のみが取り付いており軽やかさが強調されています。菰田さん渾身のディテールでしょう。

内装は白色と木目がバランス良く配され、大きな開口から光の入る明るい生成りの空間でした。

その一角に2畳に満たないひときわコンパクトは暗がりのスペースがありました。これは篭り部屋で、明るさを抑えた小さな空間で、壁に囲まれた床全面に青を基調とした柄のクッションが敷き詰めらていました。

青いクッションと壁の篭り部屋 当初「子守り」部屋と記述しておりましたが、ご本人から「篭り」とのコメント頂きました(!)大変失礼致しました・・・。

これはお客様のアイデアを元に作られたそうで、クッションの柄もご自身で選ばれたそうです。その色柄に呼応する様に壁も青色に塗られた空間は、何とも落ち着ける「囲まれ感」がありました。空間は比較的明るさを考慮する事が多い中、あえて暗がりを作る所に、新鮮さとセンスの良さを感じました。

キッチンの背面に据え付けられた造作家具はオープンな収納になっていました。ここに一つずつお気に入りの食器や小物が並んでゆく事で、さらに素敵な家ができ上がる事が想像できる、住み手に寄り添った素敵なお宅でした。

「小さな離れ by 一級建築士事務所タスエス」 来訪記

建築家31会のお仲間である、一級建築士事務所タスエスさんが設計した「小さな離れ」のオープンハウスにお邪魔して来ました。2人組のタスエスさん、今回は松下さんがメインとなって進めた案件との事です。

杉並区善福寺の閑静な住宅地に計画された今回のお宅は、母屋の隣にある駐車スペース上部に設けられた「離れ」でした。道路と母屋が建つ地盤面の段差を上手く利用した離れは、庭レベルから四隅の柱で支えられ、地面から軽やかに浮いていました。道路に面した駐車スペース部分を抜けて(離れをくぐって)階段を数段上がり母屋の間の路地を抜けると、離れの奥庭がありました。これは土いじりがお好きな奥様が、さらに手を加えて行かれるとの事でした。

離れにはこの庭に面してデッキが設けられており、数段の鉄骨階段でアプローチします。このデッキには手摺を兼ねた小さなテーブル代わりになる膳板(?)が設けられていました。これは、デッキに腰かけて、お気に入りの庭をご覧になりながらお茶をするための仕掛けで、実際に腰掛けてみると、高さ関係が絶妙で、すっぽりと納まる感じがとても良くできていました。

松下さん自ら腰掛けてくれました(シャイなのでこちらは向いてくれませんでした(笑))

建物は四角の平面形状をしていますが、屋根部分がデッキ側にずれた形態をしています。庭を覆う様にデッキ上に掛かる屋根が、凝縮された空間により親密なまとまりを生み出している事を感じました。

離れの内部は、水廻りを備えた一部屋でした。

趣味の部屋としてご友人を招いてお過ごしになるとの事で、何ともうらやましい限りです・・・。ずらされた屋根と建屋の隙間にはガラスが嵌め込まれており、合板によって奇麗に納められた天井に、柔らかく外光が廻りこんでいます。

生成りでシンプルな形態が、屋根をずらすというコンセプトをより明快に表現していると感じました。小粒ながらピリッとパンチの効いた、タスエスさんならではのこだわりを感じさせる素敵な離れでした。