110_S-HOUSE[KAMAKURA]

計画敷地:神奈川県鎌倉市
用  途:専用住宅
構造規模:RC造+鉄骨造 地上2階・地下1階
敷地面積:587.95m2
建築面積:223.70m2
延床面積:329.17m2

風を感じて

昭和初期に鎌倉山と名付けられた敷地周辺は、高級別荘地として開発され、以来その面影を現在にも残す良好な地域です。その土地の持つグレード感と良好な眺望という高いポテンシャルを最大限に生かした建物及び敷地内の計画案を策定しました。

敷地周辺は相模湾に南面する傾斜地の頂上付近にあたる土地です。標高約100mのこの地は、日中の海から山へと滑昇風-Anabatic wind-の通り道となり、南北方向に風が抜ける事が予想されます。南側の海に向かっては土地が寄り付き道路から1段高く造成されている事もあり、良好な眺望と陽当たりを確保する事ができます。東西両側の隣地は建物が接近しているため、ある程度の視線の対応に配慮が求められると思われます。北方向には、道路をはさみ深い緑が残り、木々に囲まれた鎌倉山ならではの景観を感じさせます。敷地内の外構に於いても、植栽を積極的に行い、周辺との連続感を持たせる事により、良好な景観作りに積極的に参加する事が望まれます。

海へ向かっての良好な景観はこの計画の中心になります。四季折々の空と海の色、日の出から日没への太陽の移ろいや影の長さ、天候の変化や雲の流れ等、常に変わり続ける自然の様々な風景が毎日展開されます。敷地北側の緑も季節ごとに様々な表情を見せ、うねる様な木々の葉の動きは風の流れを感じさせる事でしょう。

建物は、南北方向に長い敷地の北側に2層分、南側に1層分の箱形をそれぞれ並べ、その箱に大壁と大屋根をコの字型にしたフレームをかぶせた構成になります。
フレームは南北方向に抜けており、南側の海への景観と北側の緑との両方向に視線を促し、隣地とは壁により視線を遮ります。箱形とフレームの間には隙間を設け、ある部分はアプローチや回廊といった屋外空間として、ある部分はガラスで覆われた室内として、内と外の中間的な空間を積極的に設けます。フレーム下の箱の上部は居室となり、フレームの外側は屋上庭園として利用します。建物の機能としては北側の箱形は地階に車庫、1階にライブラリー、書斎、茶室といった文化的な色を持った諸室、2階がリビング•ダイニングになります。南側の1層は、寝室を中心とした水廻りとウォークインクローゼットといったプライベート色の強い部屋で構成し、その上部は庭園とし、断熱効果を高めます。各諸室は、その使われ方でも様々なシーンが連想されます。今回の提案では機能と内装による転換にとどまらず、周辺環境との関わり方にも変化を持たせ、さらに多様なシーンを生み出す事がが可能です。

株式会社3*D空間創考舎一級建築士事務所
スリーディークウカンソウコウシャ

東京都港区赤坂2-5-8 Hulic JP SPACES赤坂
TEL 03-3560-6487

一級建築士事務所 東京都知事登録53299号
設立 2007年2月28日
代表取締役 石川 利治(一級建築士)

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