洋楽を聴くきっかけになった出来事は1本のカセットテープ(既に過去の異物となってしまいまいたが、再注目もされていたり・・)だと記憶しております。かれこれ、30年以上前の話になりますが、当時は貸しレコード(レコードをレンタルする商売!)がまだ一般的ではなく、FMラジオからテープに録音する「エアチェック」(・・・!!!)で音楽を手に入れていました。その数あるテープの中で、父がたまたま試しに何かの音楽番組を録った中に含まれていたのが、当時はやりのウエストコーストサウンド特集の番組でありまして、その中の1曲がThe Doobie Brothersの[LONG TRAIN RUNNIN’]でありました。その時は、とりたてて気に留めていなかったのですが、高校に進学してから、同級生で現在も親交のあるバンマス(バンドのリーダー)のドラマーK氏が、やはりウエストコーストを好んで聴いておりまして(Eaglesが主ですが)当然Doobieにも詳しく、彼のエアチェックテープを借りる機会がありました。ところが、これがいわゆる後期Doobieサウンドと云うか、それまで知っていた[LONG TRAIN RUNNIN’]と同じバンドとはとても思えない音楽が展開されておりまして、非常に驚きました。
A面が[MINUTE BY MINUTE]
B面が[ONE STEP CLOSER]という、Michael MacDonald (vo,key)加入後の集大成ともいえる2枚のアルバムが録音されていました。音そのものはタイトなバンドサウンドであるとともに、それぞれのパートが複雑に絡み合い「うねり」を生み出しています。キャッチーでありながら少し濁りを持ったコード進行と練り上げられたコーラスにからむMichaelの存在感のあるボーカルに、直ぐにはまってしまいました。特に[ONE STEP CLOSER]は現在も聴き続けている個人的にエバーグリーンな作品のひとつでありまして、当時はLPレコードの時代であったのでカセットテープに落としてカーステレオでしつこい程、聴いておりました。
しばらくした後にCDを購入して、さらに聴き続けましたが、音が良いとされていたCDが、いまいちピンとこなく(明らかにアナログ音源の方が音の分離と厚みがありCDは薄く分解も悪い感じ)、段々と食指が動かなくなってしまいました。ところが最近になって、例の紙ジャケットリマスター盤により、生き返った音源を手に入れることができ、改めてしつこく聴いている日々なのであります。前作[MINUTE BY MINUTE]での、Michael MacDonaldのDoobieサウンドはひとつの完成形を見た様に思えましたが、[ONE STEP CLOSER]ではより、バンド全体での音作りにベクトルが向いた様に感じられ、アルバム全体の統一感が増した様な気がします。これが後期Doobieの最後のスタジオアルバムになってしまいましたが、前作が大々的な成功を納めた後の葛藤の中で紡ぎだされた一流プレーヤーのエネルギーは解散という所まで行き着いてしまいましたが、その音は今も色あせないと改めて感じます。