建築

安藤忠雄 建築展 [挑戦-原点から-]

現在進めている千束の住宅コンペが、間口4Mに満たない狭小敷地の計画になります。計画案を詰めてゆく過程で、様々な狭小住宅をひも解いてみたのですが、その中で、やはり安藤忠雄氏の「住吉の長屋」はどうしても避けて通る事のできない重要な指標であります。傑作の誉れ高いこの住宅は、中庭を内包するコンクリート打ち放しの安藤氏の出世作になるのですが、その魅力は今も衰えていません。実は、この原寸模型がギャラリー間で行われている建築展で展示されているとの事で、早速足を運んでみました。
極限まで切り詰められた空間は、確かにコンパクトなのですが、狭く息苦しいという事はなく、逆に全てのものが自分の手が届く範囲にある居心地の良さを感じる事ができました。これは中庭に開いた開口の効果が高く、庭を挟んで対面した居室も一体の空間と感じられ、内部-外部-内部の連続が奥行きとして感じられます。また、それぞれの空間が持つ幅・奥行・高さのプロポーションが非常に練り上げられている様に感じられました。これは体で建物の大きさをイメージしながら作り上げていったと思うのですが、この設計者としての原点ともいえる空間をイメージする事の大切さを改めて感じました。もちろん、雨の日には傘をさして寝室に行かなければならないといった、不自由さ(?)を内包しているのですが、ここに「自然と共に暮らす」といった価値観を見いだしているお施主さんもやはり素晴らしいですね。確実にここだけに存在するはずの空気が流れているのですから・・・。

ひとくぎり

先月より進めていたコンペ[S-HOUSE_KAMAKURAYAMA-Anabatic wind-]を、夕方に無事提出する事ができました。鎌倉での現地調査会に参加してから約1ヶ月経つ事になります。毎度の事ながら最後は怒濤の追い込みが入り、結局昨晩は事務所泊となってしまいました。提案書の文章作りには時間がかかるのですが、夜も更けるにつれ気分が大きくなって行き、翌朝読み返すと中々の問題作が残る事になったりします。その辺りを踏まえたつもりではありますが、今回もそれなりの思入れの一人歩きがそこかしこに感じられました。書き上げた原稿を、改めてスタッフに添削して貰いましたが、独特の言い回しといい、小難しさといい、赤入れされて改めて気づかされる事が多いこと・・・。どうも癖がある様です(これまでお読みの方は既にお気づきかもしれませんが・・)。何はともあれ、やりきった感はあるので、ひとくぎりはつきました(結果が伴えば更に嬉しいですが・・・)。

無事に提出を完了できたので、夜から大学時代のサークル(バレーボールです)仲間と新橋で呑みました。様々な分野で活躍している仲間と最近の仕事の話や合宿での思い出(よもやま)話や、仲間の噂話に花が咲き、あっと云う間に時間が過ぎました。寝不足などもすっかり忘れておりますが、明日は朝から講義であります・・・。遅刻できませんので、このあたりで・・・。
 

NCUさんの新事務所にお邪魔して来ました

仕事でお世話になっている構造設計事務所NCUさんの新オフィスに初めてお邪魔しました。今年の7月に自由が丘に移転されており、メールでのお祝い連絡はさせていただいていたものの、早くお伺いしたいと思っているうちに秋になってしまいました。
取締役の長瀬さんと初めてお会いしたのは、SONY CITY新築工事の仕事でした。

品川港南口のSONY CITY


2004年頃だったと思うので、かれこれ5年近いお付合いになります。この現場は、とても大型の物件であったので、仕事量とそれをこなすためのスピード感がかなりハードであったのですが、苦楽をともにした中で長瀬さんのお人柄と仕事ぶりに触れ、勝手ながら大きな信頼を寄せさせて頂いており、それ以降、今日に到るまで、懇意にさせて頂いているといったところです。2005年に以前の職場で一緒だった植畑さん (代表取締役) と近藤さん (取締役) と3人で、それぞれの頭文字をとったNCU一級建築士事務所を設立された。現在は総勢8名でお仕事をされていると云うことで、大変なご活躍ぶりです。
おしゃれな街並みの1階に構えていると云うことで、ガラス張りの玄関から中を覗く方が多いと噂に聞いていました。たまたま土地勘のある場所であったこともあり、迷わず到着することができました。
モノトーンを基調にした内部は大変スタイリッシュで、ショップに見間違うような格好良さでした。たしかにこれは通りがかりに中を覗きたくなる。とても良いオフィスです。
インテリアの様子も判ったので、お祝いに鉢植えなどを送る事にしました。最近、通勤途中に気になるグリーンショップができたので、そこで物色してみようと思います。
追記 2017/04/18:その後,NCUさんはさらにお仕事を順調に進められており、現在は人数も10名を越えております。2008年当時の事務所から、同じく自由が丘のテナントビルの2階に移転されました。こちらも素敵な内装で、構造事務所のイメージを凌駕しております(笑)。

舟越桂 夏の邸宅 アールデコ空間と彫刻

東京都庭園美術館での展覧会の最終日(〜2008年9月23日)が間近に迫っていたため、足をのばす事にしました。涼しげなひとかたの中に存在感と強さを持つ、氏の初期の作品を思い浮かべ、ともすれば主張のあるアール・デコの室内空間の意匠に、彫刻が埋もれてしまうのではないかとの期待と不安とを持ちながら、その対峙に接しました。

館内に足を踏み入れた瞬間に、そんな思いは杞憂に終わりました。作品の存在感は圧倒的なのでした。最初に迎え入れてくれる彫刻は、ひとかたをしているもののそれはすでに人間ではなく、両性具有の存在が静かに宙に浮いていました。もともと邸宅であった建物は、天井の高いゆとりをもった空間に、客間、寝室、浴室といった部屋毎に様々な素材を生かした鮮やかな意匠を持ち、当時の財力と職人の技を垣間見せています。現代では異次元空間といえるでしょう。その昭和初期に建てられた建物と共に、あたかも止まった時間の中で遠くを見続けているようにそこに佇んでいるのです。その大きさといい、目線の高さといい、遠くを見据える穏やかな表情にこの館の住人ではないかと錯覚しそうになりました。それぞれの部屋の仕上げと呼応するかの様な古色調に仕上げられた彫刻の差し色の取り合わせも美しく、意匠と衣装をコーディネートしている様な印象を受けます。館内を移動し様々な部屋を巡りながら扉枠を抜ける度に彫刻の配置と光量をコントロールした絶妙なライティングが展開してゆき立体的な箱絵を眺めているかのようでした。ドローイングの世界観と新たに生み出された展示空間に、高い次元でのインスタレーションを感じます。

撮影:今井智己


・・・できれば、入場者の少ない時に訪れたかった。
余韻もさめやらぬまま、美術館を後にし、通りに出た所で、一緒にお仕事をさせて頂いている内原デザイン事務所の目黒さん(弊社がプロジェクト参加しているSONY CITYのライティングを担当されています)と偶然に出会いました。よくよくお話を伺っていると、今回の展示の照明デザインをされたとの事でありました。(なるほど・・)と妙に合点がいき、改めてプロの仕事の完成度の高さを反芻するのであります。

鎌倉めぐりなど @報国寺 _2008/09/22

鎌倉巡りの現調会の最後に、かねてからの希望もあり、スタッフと共に報国寺の庭へ立ち寄る事にしました。個人的には今回の訪問が3回目になります。思い起こせば、初めて訪れたのは中学3年の春に行う校外授業(要は秋にひかえる京都修学旅行の前練習といったところだったのでしょうか・・・)になるので、かれこれ25年以上も前の事になります。2回目は大学生の頃なので、それでも15年近くが経っているわけで、寺の全体像等は思い出せず、部分的な記憶の断片が頭に残っているにすぎませんでした。

ただ、度々訪れたくなる程、深く印象に残っているのは、この寺の「竹の庭」による所が大きいです。

 
庭内に足を踏み込むと、およそ2000本あると云われる孟宗竹が眼前にひろがります。傾きかけた陽の光を竹が細長く切り裂き、竹林の向こうの背景をかき消してしまい、目の前に永遠と続く様な奥行きを感じさせます。遠近感を失い、宙に浮いている様な浮遊感におそわれました。竹の足下広がる落ち葉が、あたりの音を吸い込んでいるのか、しばし静けさに身を置いてみます・・・この感覚は確かに記憶がある・・・。
庭の奥にある茶席でお抹茶を頂き、一心地がついた所で帰路につく事にしました。

鎌倉めぐりなど @擂亭

先日(執筆時は2008年9月頃になります)新規物件コンペ[S-HOUSE_KAMAKURAYAMA-Anabatic wind-]の現調会があり、久しぶりに鎌倉に行く事になりました。計画敷地は高台にあり、南に相模湾を見下ろす絶好のロケーションでした。お施主さんが持参されたイメージスクラップも非常に趣味の良さを感じられ、俄然やる気を出したのですが、エントリー数が100組近くにものぼり、これを勝ち抜くのは至難の業と、少々複雑な思いで敷地を後にしました。
当日は折角の遠出なので鎌倉巡りなどをする事にしました。午前中に到着してから早めの昼食を、そば・会席料理の「擂亭(らいてい)」で取る事にしました。

通りに面した山門を潜ると石畳の路地が母屋へと繋がっており、木々が気持ちの良い木陰を落としています。開店直後という事もあり、正面の母屋から出て来た女将さんが入口付近でお出迎えくださりました。良くお手入れのされた庭と相まって期待感が高まりました。予約をしていかなかったため、母屋正面の2階入口ではなく、1階の店内に廻り込むことになる。階段をおりながら木々の間を抜けて左へ大きく曲がった所で、庭が開け母屋の全景が伺えました。江戸時代の農家の旧宅を移築した母屋は小高い丘にあり、前面の庭に開け放たれた開放感ある建物でした。2階の窓にはステンドグラス等もちりばめられ、豪農の暮らしぶりを伺えます。良い天気にも恵まれ、緑の芳香を感じながら遠景の海を想像しながらそばをいただくことに・・・久しぶりに味わう至福の時間におおいに満足しました。