KEYBOARD

Heavy rotation Jan/2009_ MANNEQUIN/Marc Jordan [1978]

先月に引き続きエアチェック話にて。
80年代だったかどうか記憶がさだかではないのですが、NHK-FMの16時から放送されていた「軽音楽をあなたに」と云う番組が後に「午後のサウンド」になったと記憶しています。その中でプロデューサー:Gary Katzを特集した放送(恐らく湯川れい子さんがDJ)を録音したテープが残っております。テーマは「Gary Katzに乾杯」と云うもので、彼の奇人ぶり等も交えながら、EYE TO EYE、Diana Ross、Steely Danといったプロデュース作品を流すプログラムでした。この中でお気に入りの1枚として紹介されていたのが本アルバムです。
2作目のBLUE DESART(Jay Graydonのプロデュース)と双璧をなす名作であり、AOR好きの方の中でも好みが分かれているようですが、個人的にはこの1作目に軍配があがります。派手さは無いが、各ミュージシャンの確かな演奏がしっとりと刻まれ、余韻を大切にしている作品であると感じます。特に、DrumのJeff PorcaroとBassのChuck Raineyの抑えたながらもツボを抑えたリズム隊と恐らくLarry CarltonであろうGuitarが全編を通して、このアルバムのカラーを生み出している様に感じます。全ての曲が良いのですが、特に気に入っているのは最後をかざる「Lost Because You Can’t be Found」で、淡々と進む曲調の中で特にDrumのドライブ感が際立ちます。もちろん、Marc Jordan本人のVocalも忘れられません。少しクセのある声質と独特の歌い回しとフェイクの入り方は唯一無二の存在感である事は確かでしょう。・・・これからも大切な1枚であり続けると思います。
ただ、手元にあるCDは90年代初頭に販売されて物で、正直音質が悪いのが少し残念な所で・・・。現在は販売されていないと云う事もあり、中古盤は1万円程度の値がついているとか!!。そんなコレクターアイテムであるようだが、是非ともリマスターされた良い音で、聴きたいところが1リスナーとしての本音でしょうか。

追記200713:AORのマストアイテムである当アルバムはその後、音質の異なるグレードで何度かリマスターされました。当然の様に購入致しまして、結構な頻度で聴いております。

Heavy rotation Dec/2008_ ONE STEP CLOSER/The Doobie Brothers [1980]

洋楽を聴くきっかけになった出来事は1本のカセットテープ(既に過去の異物となってしまいまいたが、再注目もされていたり・・)だと記憶しております。かれこれ、30年以上前の話になりますが、当時は貸しレコード(レコードをレンタルする商売!)がまだ一般的ではなく、FMラジオからテープに録音する「エアチェック」(・・・!!!)で音楽を手に入れていました。その数あるテープの中で、父がたまたま試しに何かの音楽番組を録った中に含まれていたのが、当時はやりのウエストコーストサウンド特集の番組でありまして、その中の1曲がThe Doobie Brothersの[LONG TRAIN RUNNIN’]でありました。その時は、とりたてて気に留めていなかったのですが、高校に進学してから、同級生で現在も親交のあるバンマス(バンドのリーダー)のドラマーK氏が、やはりウエストコーストを好んで聴いておりまして(Eaglesが主ですが)当然Doobieにも詳しく、彼のエアチェックテープを借りる機会がありました。ところが、これがいわゆる後期Doobieサウンドと云うか、それまで知っていた[LONG TRAIN RUNNIN’]と同じバンドとはとても思えない音楽が展開されておりまして、非常に驚きました。

A面が[MINUTE BY MINUTE]

B面が[ONE STEP CLOSER]という、Michael MacDonald (vo,key)加入後の集大成ともいえる2枚のアルバムが録音されていました。音そのものはタイトなバンドサウンドであるとともに、それぞれのパートが複雑に絡み合い「うねり」を生み出しています。キャッチーでありながら少し濁りを持ったコード進行と練り上げられたコーラスにからむMichaelの存在感のあるボーカルに、直ぐにはまってしまいました。特に[ONE STEP CLOSER]は現在も聴き続けている個人的にエバーグリーンな作品のひとつでありまして、当時はLPレコードの時代であったのでカセットテープに落としてカーステレオでしつこい程、聴いておりました。

しばらくした後にCDを購入して、さらに聴き続けましたが、音が良いとされていたCDが、いまいちピンとこなく(明らかにアナログ音源の方が音の分離と厚みがありCDは薄く分解も悪い感じ)、段々と食指が動かなくなってしまいました。ところが最近になって、例の紙ジャケットリマスター盤により、生き返った音源を手に入れることができ、改めてしつこく聴いている日々なのであります。前作[MINUTE BY MINUTE]での、Michael MacDonaldのDoobieサウンドはひとつの完成形を見た様に思えましたが、[ONE STEP CLOSER]ではより、バンド全体での音作りにベクトルが向いた様に感じられ、アルバム全体の統一感が増した様な気がします。これが後期Doobieの最後のスタジオアルバムになってしまいましたが、前作が大々的な成功を納めた後の葛藤の中で紡ぎだされた一流プレーヤーのエネルギーは解散という所まで行き着いてしまいましたが、その音は今も色あせないと改めて感じます。

Heavy rotation Nov/2008_DOWN TWO THEN LEFT/Boz Scaggs [1977]

数々のヒット曲を持つボズ・スキャッグスの作品の中で、もっとも好きな曲はアルバム[Middle Man]の1曲目JOJO (1980)なのですが、アルバムでと云えば、この[DOWN TWO THEN LEFT]が気に入っております。これまで何度も繰り返し聞いてきた名盤と同じ様に、本作はアルバムを通しての完成度の高さと楽曲、アレンジの良さが、お気に入りの1枚になった理由です。それをたまたま中古CD屋で紙ジャケットのリイシュー版を見つけたため、今月の愛聴盤となった次第です。名うてのスタジオミュージシャンが揃っていると云うだけでは語れない、バンドとしての演奏の熱さと一体感が特に素晴らしいです。特に2曲目の[HARD TIMES]は淡々としたドラムとギターの表現力あるカッティングにボズのソウルフルな歌声が絡み合い、独特な空気感が絶妙ですね。

スタジオ練習とその後

前回のHeavy rotation Sep2008で少し触れたバンド再編後の初スタジオ練習が先週末に行われました。昔の仲間が全員集まるのはそれこそ10年ぶり位で、さすがに懐かしい限りでありました。肝心の音はといえば、コメントを差し控えたくなる所ではありますが・・・・いわゆる惨状に限りなく近かったです(苦笑)。まあ、それでも昔とった杵柄といいますか、結成当時から永年やって来た十八番のナンバーは回数を重ねるとそれなりにまとまって来る等、あながち捨てた物ではないかな・・・・と。しかしながら、演奏中にGROOVEし一種のトランス状態に入る様な気持ちよさは、まだ感じられず、もうしばらく各自に余裕を持って演奏するゆとりが必要かもしれません。今後の課題としましょう。

といった練習はそこそこに、終了後には近くの呑み屋で一席設けました(というか、こちらがメインだったという話もありますが・・・)。ここでの掛け合いは、10年のブランクを全く感じさせない、というよりは、むしろ昔より盛り上がりを見せる程、みなさん絶好調でありました。話の内容は多岐に渡るのですが、やはり音楽の話題で盛り上がる事は多く、これは昔と変わりませんでした。ただ、ここではi-Podがはばを聞かせ、映像も併せて皆で覗き込む様な展開に・・・10年前には無かった情景が広がっていました。

追記2017/05/08:そのi-Podも今となっては、殆どお見掛けせず、さらに世の中の流れを感じる今日この頃です。きっと10年後はさらに色々な事が変わっているのでしょうね・・・・。

Heavy rotation Sep/2008_LIVE/Donny Hathaway [1972]


音楽関係のブログシリーズ「Heavy rotation」
直近に聴く機会が多かった曲、アーティストについて、あれこれと書かせて頂くシリーズを立ち上げさせて頂きます。
1曲目は[Donny HathawayWhat’s Goin’ On] です。わたくし事ではありますが、大学4年の頃から同期と共にバンド活動を行っております。今はメンバーそれぞれが社会人として忙しくしており(中には海外勤務などもあり)中々集まる機会が設けられず、かなりのブランクが開いてしまいました。そんな中、Voの拓司くんが日本に戻って来るという事で、久しぶりにスタジオ入りする事になりました。そこでの課題曲が今回のお題となっている次第です。
そんなよもやま話はともかくとして、このアルバムは間違い無く歴史に残る傑作でしょう。バンドの高い演奏能力と一体感、練られたアレンジとインプロビゼーションも織り交ぜた躍動感がライブ音源として活きいきと残されています。小型のライブハウスでの演奏に、観客も敏感に反応し、さらに一体感が生まれているのが手に取る様に判ります(まるでその場にいる様な錯覚を感じ、その様子にトリハダが何度もたちます)。特に注目するのはBassのWillie Weeksの演奏で、各メンバーの掛け合いを後押ししながら要所に織り込まれる音がバンド全体にグルーブ感を生み出している様に感じられます。紡ぎだすメロディラインが楽曲全体の色を支えている印象です・・・実にすばらしい・・・。
こんなバンド演奏に一歩でも近づけたらと思う次第です(無理ですが・・・)。実際に我々が演奏すると、どうなるか・・・。What’s Goin’ OnのオリジナルはMarvin Gayeにもかかわらず、このDonny Hathawayのライブバージョンの演奏がバンドスコアとして出まわっています。各演奏を音符として拾う事はできたとしても、その躍動感、ノリによる独特なグルーブを出すのは至難の技で、特にいわゆるブラックなノリは、我々東洋人には中々の難易度の高さです。イントロのエレピ「Wurlitzer(ウォーリッツァー)との事」の右手に絡む様にカウンターで入って来る左手のベースラインや、ソロの中での独特な緩急を交えたメロディラインなど、どうしたらこんなに表情豊かな音が出せるのでしょうか・・・
まさに神ですね。