Heavy rotation Sep/2008_LIVE/Donny Hathaway [1972]


音楽関係のブログシリーズ「Heavy rotation」
直近に聴く機会が多かった曲、アーティストについて、あれこれと書かせて頂くシリーズを立ち上げさせて頂きます。
1曲目は[Donny HathawayWhat’s Goin’ On] です。わたくし事ではありますが、大学4年の頃から同期と共にバンド活動を行っております。今はメンバーそれぞれが社会人として忙しくしており(中には海外勤務などもあり)中々集まる機会が設けられず、かなりのブランクが開いてしまいました。そんな中、Voの拓司くんが日本に戻って来るという事で、久しぶりにスタジオ入りする事になりました。そこでの課題曲が今回のお題となっている次第です。
そんなよもやま話はともかくとして、このアルバムは間違い無く歴史に残る傑作でしょう。バンドの高い演奏能力と一体感、練られたアレンジとインプロビゼーションも織り交ぜた躍動感がライブ音源として活きいきと残されています。小型のライブハウスでの演奏に、観客も敏感に反応し、さらに一体感が生まれているのが手に取る様に判ります(まるでその場にいる様な錯覚を感じ、その様子にトリハダが何度もたちます)。特に注目するのはBassのWillie Weeksの演奏で、各メンバーの掛け合いを後押ししながら要所に織り込まれる音がバンド全体にグルーブ感を生み出している様に感じられます。紡ぎだすメロディラインが楽曲全体の色を支えている印象です・・・実にすばらしい・・・。
こんなバンド演奏に一歩でも近づけたらと思う次第です(無理ですが・・・)。実際に我々が演奏すると、どうなるか・・・。What’s Goin’ OnのオリジナルはMarvin Gayeにもかかわらず、このDonny Hathawayのライブバージョンの演奏がバンドスコアとして出まわっています。各演奏を音符として拾う事はできたとしても、その躍動感、ノリによる独特なグルーブを出すのは至難の技で、特にいわゆるブラックなノリは、我々東洋人には中々の難易度の高さです。イントロのエレピ「Wurlitzer(ウォーリッツァー)との事」の右手に絡む様にカウンターで入って来る左手のベースラインや、ソロの中での独特な緩急を交えたメロディラインなど、どうしたらこんなに表情豊かな音が出せるのでしょうか・・・
まさに神ですね。

舟越桂 夏の邸宅 アールデコ空間と彫刻

東京都庭園美術館での展覧会の最終日(〜2008年9月23日)が間近に迫っていたため、足をのばす事にしました。涼しげなひとかたの中に存在感と強さを持つ、氏の初期の作品を思い浮かべ、ともすれば主張のあるアール・デコの室内空間の意匠に、彫刻が埋もれてしまうのではないかとの期待と不安とを持ちながら、その対峙に接しました。

館内に足を踏み入れた瞬間に、そんな思いは杞憂に終わりました。作品の存在感は圧倒的なのでした。最初に迎え入れてくれる彫刻は、ひとかたをしているもののそれはすでに人間ではなく、両性具有の存在が静かに宙に浮いていました。もともと邸宅であった建物は、天井の高いゆとりをもった空間に、客間、寝室、浴室といった部屋毎に様々な素材を生かした鮮やかな意匠を持ち、当時の財力と職人の技を垣間見せています。現代では異次元空間といえるでしょう。その昭和初期に建てられた建物と共に、あたかも止まった時間の中で遠くを見続けているようにそこに佇んでいるのです。その大きさといい、目線の高さといい、遠くを見据える穏やかな表情にこの館の住人ではないかと錯覚しそうになりました。それぞれの部屋の仕上げと呼応するかの様な古色調に仕上げられた彫刻の差し色の取り合わせも美しく、意匠と衣装をコーディネートしている様な印象を受けます。館内を移動し様々な部屋を巡りながら扉枠を抜ける度に彫刻の配置と光量をコントロールした絶妙なライティングが展開してゆき立体的な箱絵を眺めているかのようでした。ドローイングの世界観と新たに生み出された展示空間に、高い次元でのインスタレーションを感じます。

撮影:今井智己

・・・できれば、入場者の少ない時に訪れたかった。
余韻もさめやらぬまま、美術館を後にし、通りに出た所で、一緒にお仕事をさせて頂いている内原デザイン事務所の目黒さん(弊社がプロジェクト参加しているSONY CITYのライティングを担当されています)と偶然に出会いました。よくよくお話を伺っていると、今回の展示の照明デザインをされたとの事でありました。(なるほど・・)と妙に合点がいき、改めてプロの仕事の完成度の高さを反芻するのであります。

鎌倉めぐりなど @報国寺 _2008/09/22

鎌倉巡りの現調会の最後に、かねてからの希望もあり、スタッフと共に報国寺の庭へ立ち寄る事にしました。個人的には今回の訪問が3回目になります。思い起こせば、初めて訪れたのは中学3年の春に行う校外授業(要は秋にひかえる京都修学旅行の前練習といったところだったのでしょうか・・・)になるので、かれこれ25年以上も前の事になります。2回目は大学生の頃なので、それでも15年近くが経っているわけで、寺の全体像等は思い出せず、部分的な記憶の断片が頭に残っているにすぎませんでした。

ただ、度々訪れたくなる程、深く印象に残っているのは、この寺の「竹の庭」による所が大きいです。

 
庭内に足を踏み込むと、およそ2000本あると云われる孟宗竹が眼前にひろがります。傾きかけた陽の光を竹が細長く切り裂き、竹林の向こうの背景をかき消してしまい、目の前に永遠と続く様な奥行きを感じさせます。遠近感を失い、宙に浮いている様な浮遊感におそわれました。竹の足下広がる落ち葉が、あたりの音を吸い込んでいるのか、しばし静けさに身を置いてみます・・・この感覚は確かに記憶がある・・・。
庭の奥にある茶席でお抹茶を頂き、一心地がついた所で帰路につく事にしました。

鎌倉めぐりなど @擂亭

先日(執筆時は2008年9月頃になります)新規物件コンペ[S-HOUSE_KAMAKURAYAMA-Anabatic wind-]の現調会があり、久しぶりに鎌倉に行く事になりました。計画敷地は高台にあり、南に相模湾を見下ろす絶好のロケーションでした。お施主さんが持参されたイメージスクラップも非常に趣味の良さを感じられ、俄然やる気を出したのですが、エントリー数が100組近くにものぼり、これを勝ち抜くのは至難の業と、少々複雑な思いで敷地を後にしました。
当日は折角の遠出なので鎌倉巡りなどをする事にしました。午前中に到着してから早めの昼食を、そば・会席料理の「擂亭(らいてい)」で取る事にしました。

通りに面した山門を潜ると石畳の路地が母屋へと繋がっており、木々が気持ちの良い木陰を落としています。開店直後という事もあり、正面の母屋から出て来た女将さんが入口付近でお出迎えくださりました。良くお手入れのされた庭と相まって期待感が高まりました。予約をしていかなかったため、母屋正面の2階入口ではなく、1階の店内に廻り込むことになる。階段をおりながら木々の間を抜けて左へ大きく曲がった所で、庭が開け母屋の全景が伺えました。江戸時代の農家の旧宅を移築した母屋は小高い丘にあり、前面の庭に開け放たれた開放感ある建物でした。2階の窓にはステンドグラス等もちりばめられ、豪農の暮らしぶりを伺えます。良い天気にも恵まれ、緑の芳香を感じながら遠景の海を想像しながらそばをいただくことに・・・久しぶりに味わう至福の時間におおいに満足しました。