傾斜地を活かした平屋暮らし2 K-HOUSE=in the Forest=

前回に引続きK-HOUSE=in the Forest=という長野県に建つセカンドハウスです。傾斜地に木造平屋を建てるために、その下のRC造をどのように作ったのかをご説明致しましょう。

コンクリート打設直後の様子 手前が地下室の屋根部分で奥に擁壁裏面が見える この後、型枠脱型後に土を埋め戻す

谷側からの外観で、木造平屋下のコンクリート壁は横長のファサードを構成していますが、壁の裏側は異なった使われ方をしています。

3種類の色分けをしましたが、地下室部分は必要最小限の大きさとし、その他は基本的には基礎と擁壁になります。木造住居部分より左側に伸びている擁壁部分は、平坦な屋外空間を作るための物ですが、それ以外に「土量のバランスを取る」ための壁でもあります。傾斜地に関しては、敷地内の土を何らかの形で掘削したり盛ったりといった、土の移動を伴うケースが多くなります。これは、建物内部で平らな床を作るためにおこる事で、内部の床を傾斜に合わせてなるべく土の移動を少なくする事は、工事コストを削減する上で有効な方法になります。この土を多く掘削し、敷地外に搬出しなければならない場合は、さらに処分費用が掛かる事になります。

建物を連続で輪切りにした断面 図中の紫色が掘削した土で、水色が埋め戻しに利用した土

今回は、この場外処分しなければならない土を最小限に抑えるために、地下室を作るために掘削した土を、擁壁の背後に埋め戻し、建物の基礎部分と平坦な庭部分に利用しました。

傾斜に馴染む様な外部階段も作り、敷地の起伏に寄り添う、地に根ざした外部空間ができたのではないかと思います。

  1. 平屋の魅力を考える
  2. 平屋を手に入れる上で越えなければならないハードル
  3. 平屋を建てるのに必要な土地の広さとは 平屋と土地の関係
  4. 平屋の醍醐味 内部と外部の関わり合い
  5. 内に開く平屋 中庭を持った平屋の場合
  6. 傾斜地でも平屋の暮らしを
  7. 傾斜地を活かした平屋暮らし1 K-HOUSE=in the Forest=
  8. 傾斜地を活かした平屋暮らし2 K-HOUSE=in the Forest=

傾斜地を活かした平屋暮らし1 K-HOUSE=in the Forest=

前回の「傾斜地でも平屋の暮らしを」の中で、傾斜地に平屋を建てる上で、考慮しなければならないポイントを挙げました。実際の設計で建物と地面の関係に折合いをつけるのは、平屋に限った事ではありません。今回、ご紹介するのはK-HOUSE=in the Forest=という長野県に建つセカンドハウスです。地上の住居部分は木造平屋で、その下にRC造半地下の車庫があるお宅になります。

上のCGは斜面の谷側から見た外観になります。緑色の外壁部分が木造の住居になり、その下にRC造の車庫があります(焦げ茶部分が車庫入口です)。玄関はこの外観の反対側になり、斜面の山側になります。

玄関へのアプローチ 写真左側が斜面の山側になる

こちらが住居部分の平面図になります。図面の下が斜面の山側で、上が谷側です。アプローチは斜面の山側を利用しています。

半地下の車庫は住居部分の概ね半分の面積になります(図中の水色の範囲がそれぞれの大きさになります)。図中の右側に地下室は無く、土の上に基礎を作る通常の木造と同じ作り方をしています。紫色に塗られた部分は、車庫の壁であるのと同時に、住居部分下では基礎に、それ以外の部分では擁壁になっています。これは、住居部分下の空間を有効に使うためと、住居部分の右側に土を盛り、平坦な地面を設けるための仕組みです。これにより、住居部分と地面の関係が、より近くなり、平屋としての佇まいを確保する事ができました。

擁壁と土盛りによってつくられた平場 枕木を敷いた屋外スペースになっている

次回は、ここでの工事内容をもう少し掘り下げる事にします。

  1. 平屋の魅力を考える
  2. 平屋を手に入れる上で越えなければならないハードル
  3. 平屋を建てるのに必要な土地の広さとは 平屋と土地の関係
  4. 平屋の醍醐味 内部と外部の関わり合い
  5. 内に開く平屋 中庭を持った平屋の場合
  6. 傾斜地でも平屋の暮らしを
  7. 傾斜地を活かした平屋暮らし1 K-HOUSE=in the Forest=
  8. 傾斜地を活かした平屋暮らし2 K-HOUSE=in the Forest=

 

傾斜地でも平屋の暮らしを

ここまで平屋の魅力を、敷地との関係性を交えて探って来ました。「地に根ざす」という事をイメージした時、何となく平坦な地形を思い浮かべるのではないでしょうか。

ここで,改めて、「平屋の魅力を考える」で述べた優れた点を確認してみましょう。

  • 地に根ざした暮らしが臨める
  • 水平移動で完結できる(上下移動がない)
  • 家族のコミュニケーションが図り易い
  • 構造が堅牢になる
  • 部屋の大きさに自由度が高い

果たしてこれらは平坦な土地でしか成り立たず、傾斜地では難しいのでしょうか?この中で特に相違点が生まれるのは「地に根ざした暮らしが臨める」といった項目でしょう。敷地が傾斜している事を考えると,建物の外周全てで地面と連続させるのは難しいかもしれません。ワンフロアで日常生活が完結していることからすれば「平屋の暮らしを行っている」と拡大解釈をお許し頂くとの前提で、以下に傾斜地と建物の取合いを簡単な概念図で表します。

 

A案の傾斜地に平屋を載せるイメージであれば、建物の下(基礎部分)を地面から持ち上げる柱、梁といった構造フレームが必要になります。イラストの建物左側は入口などをイメージしていますが地面との接続を行います。こちら側に関しては、建物と敷地の連続感は生まれる可能性はあります。傾斜の低い側に関しては、建物が地面から浮いている様な状態になるため、使い勝手には制限が加わり、デットスペースになってしまう事も考えられます。

上記は建物と地面の接続が傾斜地の高い側でしたが、これは低い側で行う事も考えられます。B案は、大半が地面の中に埋まる事になるため、半地下といったイメージに近くなってきます。建物の性能上、土と接する部分は木造と云う訳にはいかず(土の中には水分が多く含まれているため、水に強い材料が求められます)多くの場合は鉄筋コンクリート(以下RC)造となります。また、地中に埋める事による土の掘削とその残土処分にもコストが掛かる事になります。

A案、B案のいずれにしても、敷地が傾斜している事により、建物を作る上での何らかのコストアップは避けられない傾向にはあります。平坦な敷地に比べ設計においても立体的な検討事項が増えるため、住宅メーカーさんは敬遠しがちになり、設計事務所の得意分野ともいれるでしょう。この事が、土地の資産価値を下げる事にも繋がっており、土地価格からすると、安価に設定されているケースが多く有ります。建物のコストアップを敷地のコストダウンでカバーすると云うことも考えられるでしょう。

次回は、安価に入手した傾斜地に、ワンフロアの生活空間を設けた過去の実例を取り上げたいと思います。

 

  1. 平屋の魅力を考える
  2. 平屋を手に入れる上で越えなければならないハードル
  3. 平屋を建てるのに必要な土地の広さとは 平屋と土地の関係
  4. 平屋の醍醐味 内部と外部の関わり合い
  5. 内に開く平屋 中庭を持った平屋の場合
  6. 傾斜地でも平屋の暮らしを
  7. 傾斜地を活かした平屋暮らし1 K-HOUSE=in the Forest=
  8. 傾斜地を活かした平屋暮らし2 K-HOUSE=in the Forest=

内に開く平屋 中庭を持った平屋の場合

外部空間と積極的な関わりを持つ事ができる平屋ですが、地続きになっている事による敷地及び敷地外との折合いの付け方も重要になります。平屋を建てる上で必要になる敷地の理想的な広さが、敷地周辺との境界線を長くする傾向にあるため、そこをどのようにするかの配慮が必要になります。開口に繋がる外部空間をコントロールできるのは、自分の敷地の中だけになりますので、借景が出来る様な場合は、積極的に境界を見えなくするなども、デザイン上は効果的かもしれません。ただ、プライバシーを確保する観点や防犯上の話からすると、地上階の開口部が多く外部空間との親和性が高い分、外からの接触には弱点を持っているともいえます。

より、高いプライバシーを確保した外部空間をどのように確保するか・・・

一つの答えとして、以前に検討を行った中庭を内包した平屋をご紹介します。

大通りの喧噪から少し距離をおいた敷地は、市街化調整区域の中にあり、農耕地も多く残る良好な環境でした。南と東には遮るものがなく、陽光がたっぷりと注ぐ、水平の広がりを持った希有な条件を備えています。敷地北側は新たに開発された宅地となり、新しく家が建ち始めました。木更津市も農地を残しながら、宅地開発を行う方向性を打ち出しており、今後も新たな住宅が増えて行く傾向にありますが、ゆとりを持った市街化が進むと思われ、良好な環境は担保される可能性が高いです。計画道路が敷設された折には、周辺環境の変化が見られるかもしれませんが、緑の多い風景はこれからも続くと思われます。

当初のご提案では、この様な敷地の持つ田園風景を室内から眺めるご提案をしましたが、防犯やプライバシーの確保をお望みという事で、中庭を設け、内側の開口を多く取る計画を行いました。以下がその時のコンセプトイメージになりますが、建物外周部は壁を多めに設定し、家の中心となる中庭に周りを諸室が取り囲む配置計画です。

居間、ダイングキッチンと家族が集まる諸室は中庭に向って、開き、よりプライベート性の高まる部屋は、その奥に配置しています。各部屋の間に細い抜けを設け、外部との繋がりは確保しつつ、あくまでも中庭は内向きに作るといったご提案でした。

中庭を介する事で、回廊ができ、親子の個室にも適度な距離感が生まれたのは副産物といえるかもしれません。また、水廻りもコンパクトにまとめる事ができ家事動線にも使い易さが、居間と一体利用も可能な和室は奥に配置されているため、家全体の中でも独立性を高める事ができたと思います。

  1. 平屋の魅力を考える
  2. 平屋を手に入れる上で越えなければならないハードル
  3. 平屋を建てるのに必要な土地の広さとは 平屋と土地の関係
  4. 平屋の醍醐味 内部と外部の関わり合い
  5. 内に開く平屋 中庭を持った平屋の場合
  6. 傾斜地でも平屋の暮らしを
  7. 傾斜地を活かした平屋暮らし1 K-HOUSE=in the Forest=
  8. 傾斜地を活かした平屋暮らし2 K-HOUSE=in the Forest=

 

 

平屋の醍醐味 内部と外部の関わり合い

平屋の特徴の一つである「地に根ざした建築」は建屋と外部空間の関係を積極的に作り込む事でさらに魅力が増します。平屋の良さを活かすためには、外部空間を効果的に設ける事が少なからず必要と思われます。そのためには少しでも建蔽率、容積率にゆとりがある敷地に建てる事が、平屋づくりを成功させる鍵の一つといえるでしょう。

■地面と建屋の連続感

居室(リビング、ダイニング、寝室など)は採光、換気のために家の外周部に配置される事が一般的です。平坦な地盤であれば、建屋の外周全てが外部空間と接している事になります。地面と室内の床面が近い平屋は、各部屋で外部空間との繋がりを持つ事が望めます。

■外部空間と建屋を効果的につなぐ開口部

建屋の周りに外部空間を設け、室内からもそれを楽しむためには開口部が必要です。外部と内部がより効果的な関わり合いになる様な、開口部の取り方が大切になってきます。外部空間との関係をいかに建物で表現するか、和風建築は我々に多くのインスピレーションを与えてくれます。

・内部と外部の連続感を強調する様な開口

・風景の一部を切り取る額縁の様な開口

・方角によって大きさ形状を使い分ける開口

・強い光を入れる開口、弱い光を入れる開口

・スクリーン(格子,障子など)を設けた開口

四季折々の自然を身近に感じていた我々日本人に染込んでいる感性を大いに刺激してくれますね。

■床の連続感

内部と外部の連続感を強調する大きな開口を設けたとします。この効果を高める重要な要素として、床の連続感があります。室内から外部の風景を眺める時に、床が段差なく開口の外まで繋がっている事で、移動するという物理的な連続性もさる事ながら、移動できそうだと感じさせる事が、連続感を生み出す要因になります。

M-HOUSE=INSIDE AND OUTSIDE= ダイニングキッチンから屋外デッキ、プールに繋がる開口

■軒の出が生む内外の曖昧さ

屋根で覆われている事は、建物の下にいるといった感覚が生まれるのですが、その軒の出の長さと高さの関係は重要です。長さが高さより勝っている程,より内部にいるといった意識を強く感じさせる効果があります。外部であるのに内部的と感じる事が,内外の曖昧さを生み、内部空間と外部空間の一体感をより増す事になります。

M-HOUSE=INSIDE AND OUTSIDE= 矩計図 軒の長さと高さは概ね1対1で作られています

■屋根高さを抑える事による効果

平屋は建屋が1層で完結しているため、壁面の高さが低く、自ずと軒先の高さも抑えられます。これは外部から建物をみた時に、その大きさがコンパクトに感じられ、より身近なスケール感を得る事ができるでしょう。庭の植栽や樹木の高さと建物が呼応する様な関係が生まれ、より「地に根ざした建築」に近づく事が出来るのです。

  1. 平屋の魅力を考える
  2. 平屋を手に入れる上で越えなければならないハードル
  3. 平屋を建てるのに必要な土地の広さとは 平屋と土地の関係
  4. 平屋の醍醐味 内部と外部の関わり合い
  5. 内に開く平屋 中庭を持った平屋の場合
  6. 傾斜地でも平屋の暮らしを
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  8. 傾斜地を活かした平屋暮らし2 K-HOUSE=in the Forest=