平屋の魅力を考える

最近は一軒家をお考えのお客様の中で「平屋」を前提にご相談を受けるケースが増えて来ました。かつては多くの日本家屋が平屋でしたが、現代ではその希少価値と相まって、改めてその良さが見直されている様に思われます。それでは、お客様を惹き付ける平屋の魅力とはいったい何なのでしょうか。

M-HOUSE=INSIDE AND OUTSIDE=

■地に根ざした暮らしが臨める

敷地が平坦であれば、建物の周りには地面があります。庭や路地、植栽といった外構を作り込むこむ事によって、建物内部と屋外の関係を積極的に活かした計画が可能になります。庭や縁側のある暮らしを現在の生活様式に組込む事は、日本らしい「自然を身近に感じる生活」の原点ともいえるでしょう。

■水平移動で完結できる(上下移動がない)

ワンフロアに全ての部屋、機能があるため、水平移動のみで生活が行えます。上下移動が無いことは家事を行う上での効率アップが計れるでしょう。また年齢を重ねるにつれ上下移動が大変になると云うのは良く聞きます。上階が無いという事は、将来的に行き辛い部屋を生みにくいという事に繋がるでしょう。

■家族のコミュニケーションが図り易い

間取りによる所は大きいですが、ワンフロアで暮らしている事で、視線や声が通り易くなるといえるでしょう。上下階に分かれて暮らしているより、お互いの存在を感じる事が容易といえるかもしれません。

■構造が堅牢になる

平屋は多層階の建物に比べて、高さを抑える事ができるため、地震、強風によって受ける外力が少なくなります。これにより、構造的に有利な建物形状が作り易いといえます。また、

■部屋の大きさに自由度が高い

平屋は多層階の建物における地上階に比べて、必要とされる柱、構造壁が軽減されるといえます。多層階の建物は、上階を支える構造が下階に必要になり、間取りにはある程度の制限が生まれる事になります。上階の床,壁,屋根を下階が支えているため、それに見合った、柱、梁が必要になるからです。

また、梁間の距離にも限界があります。広い部屋を計画した場合、独立した柱が出てきたり、構造上必要な壁が出て来るケースもあります。これに対して、平屋は、重量の軽い屋根を支えるだけであるため、構造上の成約も比較的クリアし易く間取りの自由度が増すといえるでしょう。

このように、たくさんの良い事がある平屋ですが、実際には皆さんの周りにはあまり多くは存在しません。平屋を持つ上で越えなければならないハードルが存在するからです。次回は、このあたりについて述べたいと思います。

  1. 平屋の魅力を考える
  2. 平屋を手に入れる上で越えなければならないハードル
  3. 平屋を建てるのに必要な土地の広さとは 平屋と土地の関係
  4. 平屋の醍醐味 内部と外部の関わり合い
  5. 内に開く平屋 中庭を持った平屋の場合
  6. 傾斜地でも平屋の暮らしを
  7. 傾斜地を活かした平屋暮らし1 K-HOUSE=in the Forest=
  8. 傾斜地を活かした平屋暮らし2 K-HOUSE=in the Forest=

新居をお考えになる時 まず建築家に相談してみる利点

新たに新居を構えたいとお考えになった時、様々な夢や希望をお持ちになるのは、とても大切な事だと感じます。理想の暮らしを実現するためには色々と解決しなければならない様々な事柄が次から次へと押し寄せて来ます。それを乗り越えるためには、相当なエネルギーが必要になる訳で、そのモチベーションを保つ為には、叶えたい夢や希望がその拠り所になると思うからです。

みなさまが望まれる新居の形は様々でしょう。新築をお考えの方や、新築マンションを購入する方、既にある物に手を加えるリフォームを望まれる方など、導き出される答えは、ご希望された数だけ存在します。ただ、そこには「本当にこれが良い」という答えに巡り合うために、それなりの手間と時間が必要になるでしょう。また、思い描いていた当初には分からなかった事が、住み始めてから判るという事も有るかもしれません。

我々建築家は、設計を依頼される事だけではなく、そういったおぼろげなご希望を思い描かれている時点で、ご相談を受けるケースも増えて来ました。住まいづくりのプロである建築家ならではの、お客様の暮らし方に対する解釈とそれに適した空間へのアドバイスや、専門的な知識による技術的な見解と幾つかのケースによる比較などをお伝えする事で、ご判断の一助として頂く事はきっと有用と思われます。住宅設計やリフォーム設計のご依頼に繋がる場合は勿論の事、土地や物件購入に関するご相談も、お気軽にお声掛け頂ければ幸いです。

スカイツリーを見上げる併用住宅=NARIHIRA RECEPTION=

この投稿は建築家31会のブログリレー「ばとろぐ_2014/03/31」を一部加筆したものです。

今週のばとろぐを担当する石川利治です。今回は2012年3月に行った31人展vol.4でお知り合いになったS様と進めております[NARIHIRA RECEPTION]という案件のご報告を中心に進めて行きたいと思います。1週間、宜しくお願い致します。

すっかり春めいた陽気に、少し心も軽く感じる今日この頃ですが、思い起せばS様とお知り合いになってから、2年が経ちます。ご夫婦でどのように建物を作って行けば良いかをご検討されていた折に、たまたま模型展会場の前を通りかかってお立ち寄り頂き、会場でお声掛けさせて頂いたのが始まりでした。本当に偶然にお知り合いになる事ができ、さらに新築のお手伝いが出来るとは・・・何とも不思議な巡り合わせとご縁を感じます。

案件のイメージなどは以前のばとろぐで少し紹介致しましたが、改めて概要をご案内致します。

所在地:東京都墨田区

構 造:鉄骨造地上6階

用 途:住宅・倉庫・展示室(将来対応)

スカイツリーを見上げる敷地に計画されたショールーム(将来計画)と倉庫を併設する住宅です。家庭的なおもてなしを旨とするS様の企業理念が建物全体にちりばめられています。隅田川花火を正面に望むことのできる屋上は、開放的な接遇の空間になっています。

計画から施工者決定まで、約1年半掛かりましたが、昨年の秋に地鎮祭を取り行う事が出来ました。2014年の隅田川花火にはお引渡が出来る様に、鋭意建設中です。

原風景に想うこと4_千葉県君津市

この投稿は建築家31会のブログリレー「ばとろぐ_2013/08/22」を一部加筆したものです。

人々が集まって住み、人工物を作り、市街化する事は、多かれ少なかれ何かしらの歴史(時間経過の痕跡)が折り重なっている事が想像されます。時間をかけて未開拓の地を開墾し、時代に合わせて築造と解体を繰り返して来たからです。

土木構造物、建造物などが多くひしめき合うに連れ、都市へと変わって行く訳ですが、これらの人工物があまり無い場所は、地形そのものの姿が見えやすい状態にあるといえましょう。

以前に房総半島で計画した住宅K-HOUSE=Spread BELOW=は、映像作家のSOHOでした。小高い丘の頂きに位置する計画地は、すり鉢状に広がる深い緑に覆われた山肌と谷底の池を臨む優れた景観をそなえていました。緩やかな傾斜は東方向の平野に開け、遠くには街並も点在し夜景を彩ります。敷地西側の接続道路の向かいは奇麗に植樹された平坦な果樹園が広がり、アプローチ部分の雰囲気を高めてくれていました。

敷地内には10M前後の高木も茂り、深い緑を形作るとともに、山肌の裾野には竹林が広がり風景にアクセントを与えます。

敷地北側の隣地は低木に覆われ、視界を遮るものがなく雄大な景観を臨む事ができます。接続道路から北東の眼下に広がる風景はアイスポットとなる谷底の池などの特徴的な景観を有し、背景、あるいは借景として建築空間に取り込む事が、今回の計画を行う上でも重要な要素と捉えました。

室内からは、この北東方向の景観を臨む事のできる大きなパノラマウィンドウを設けました。吹抜けに面したこの開口は4M×4Mのサイズになり、建物外観にも印象的な形態をもたらします。接続道路を北側からアプローチして来た時には、深い緑を背景に建物の全容を見る事ができ、その存在感を感じる事ができるでしょう。また、殆どが傾斜地となる今回の敷地は、屋外のまとまった平場がありません。自然に囲まれた生活をする上で、屋外作業を行える場所として、あるいは、来客も含めた充分な広さの駐車スペースとして、そして何より、この景観を満喫する事ができる展望テラスとして、屋上を利用した新たな大地を道路レベルに生み出します。

建物の全体構成は、道路と同じ高さの屋外テラス、駐車場の屋上階レベル、オフィス、カフェ等の土足ゾーンとなる2階レベル、リビング、ダイニング、ベットルーム、水廻り等、生活の中心となる1階レベルの3層になります。敷地の傾斜に沿った形で段状に箱を積み上げる事により、合理的且つ強固な構造体とする事ができます。室内は吹抜けを含んだ一体の空間としてつながっており、通風、換気にも効果的です。各階には小さな段差を絡めながら使う用途による場所性の変化を緩やかに与えます。仕事に関係する来客は2階レベルのカフェを中心に利用します。吹抜けを介して1階のリビングと面する事により、北側の大開口から眼下の池を臨む事が可能です。また東側の大きな壁面はプロジェクターを使った投影を行う事もでき、さながらシアターの様な使い勝手も望めるでしょう。

よりプライベート性の高い寝室、水廻りはカフェの下部へと配置する事により、来客の視線が直接届かない奥まった空間になります。

 

追記2017/05/15:この計画は、コンペ提出案になります。結果は落選だったのですが、提案としてはとても気に入っております。これを実現できる様な機会が訪れると良いのですが・・・。

原風景の想うこと1_赤坂見附

原風景に想うこと2_富山市舟橋

原風景に想うこと3_滋賀県大津市膳所

原風景に想うこと4_千葉県君津市

原風景に想うこと5_港区赤坂高橋是清翁公園