建築

定年を控えた単身赴任後の家をリフォームするか建替えるか

この投稿は建築家31会のブログリレー「ばとろぐ_2017/03/21」を一部加筆したものです。

ブログを書いている本日は2017年の3月ですので、お施主様とお会いしてから既に4年近くが経とうとしています。実は紆余曲折がありまして、来週末に地鎮祭を行うという、まさに現在進行形のお宅になります。前回シリーズのバトログでご紹介した[PLUS自由が丘]も「建築家サロンin自由が丘」の会場のご近隣にお住まいになられているお客様からご縁を頂きましたが、今回ご紹介する[K-HOUSE=in the Compound=]も、ご自宅から駅までの通りすがりに、たまたま模型展をご覧になられた事から始まっています。

概ね40年前にご自宅を大津に建てられ、現在は旦那様が単身赴任で東京にお住まいになり、週末に帰省されております。数年後に控えた定年退職と、お二人のお嬢様がご結婚を機にご自宅から出られるなど、生活を取り巻く環境の変化に合わせて、住まい方を見なおすタイミングが訪れていました。お話しを頂いた当初は現在のお住まいにフルリフォームを掛けるか、新たに一戸建てを建てるかで比較検討をされておりました。その中で実現されたいポイントは概ね以下になります。

1. 部屋数や収納量などをこれからの生活スタイルに合わせたい

2. お料理の好きな奥様が快適に使えるキッチンをつくりたい(お料理教室も行いたい)

3. 断熱性能を上げたい

4. 特に玄関を明るくしたい

5. 工事金額は抑えたい

上記のご希望に対して、フルリフォームと新築のメリット・デメリットを比較し、最終的には以下のポイントで新築される事を選択されました。

1. →リビング、ダイニング、キッチンを一体にした、広めの一室をご希望になり、構造フレームの制約のあるリフォームでは理想的な空間を得るのが難しかった。生活を主に2階フロアで完結したいといったご要望もあり水廻りを現在の1階から移動する必要があった。

2. →収納量を増やすと共に、お料理教室での使用を見越した対面式キッチンを計画。7脚の椅子を設けるダイニングテーブルと組み合わせるための間取りを確保する必要があった。

3. →近年の断熱性能基準に合わせるためには、内装を全て剥がし、断熱を強化する必要があり、建物の基本構造から手直しする必要が生じた。

4. →明るさと同時に、玄関の広さを確保する事が望まれた。

5. →上記の内容を加味してリフォームを行うと工事金額が新築とあまり変わらなかった

さらに今回は、敷地にゆとりがあり、建替えではなかった事も新築を選ばれた大きな要素の一つといえるでしょう。工事中も仮住まいを確保する必要も無く、新築部分の引渡しが完了した後に、引越のための梱包なども最小限に抑えながらマイペースで少しずつ家財道具を移し、最終的には現在のお宅を取り壊せば良いといった流れは、毎日の生活に大きな負担が掛からない事も、新築を行う上でのハードルを下げた様に思われます。

建替えを行った場合の進行フロー

■大津K-HOUSE=in the Compound= 設計編

00.大津で東京の設計事務所が設計・監理をする-出会う-

01.定年を控えた単身赴任後の家をリフォームするか建替えるか

02.遠隔地で行う家づくり ハウスメーカーと設計事務所の違い

03.近畿地方の家を東京で設計する

04.遠隔地の設計で建設費用を抑える方法1

05.遠隔地の設計で建設費用を抑える方法2

■大津K-HOUSE=in the Compound= 現場監理編

00.地鎮祭_大津K-HOUSE=in the Compound=

01.祠ありきの建物位置:縄張り

02.建物を支える地盤を考える

03.基礎工事の工程:掘削工事

04.基礎工事の工程:鉄筋工事

05.基礎工事の工程:打設工事

大津で東京の設計事務所が設計・監理をする-出会う-

この投稿は建築家31会のブログリレー「ばとろぐ_2017/03/20」を一部加筆したものです。

今週のばとろぐを担当する石川利治です。今回は2013年4月に行った建築家31人会の分科会「建築家サロンin自由が丘vol.2」でお知り合いになったお客様と進めております[K-HOUSE=in the Compound=]という戸建住宅のお話を中心に進めて行きたいと思います。1週間、宜しくお願い致します。

さて、テーマに掲げました“東京の設計事務所”とはどういったものでしょうか?これは”東京”を”首都圏”と置き換えて頂いても構いません。事業所を首都圏に構えている場合、多くの場合は関東近隣までの範囲で仕事をする事が多くなります。これは首都圏にいらっしゃるお客様からご依頼を受けるケースが多いため、建物を計画する敷地に関してもそこから大きく離れる事はあまり無いためです。人口が多く集まっている首都圏には、それだけ多くの設計事務所が存在しています。

それでは、今のお住まいと離れた場所に計画地がある場合はどうでしょう。故郷の土地に家を建てるケース、別荘やセカンドハウスを計画されるケース、場合によっては今後の赴任地が変わる事もあるでしょう。この時に、設計者は現在のお住まいに近いのと、計画敷地に近いのではどちらが良いのでしょうか?

個人的には、前者をお薦めしたいと思います。それは、理想の住まいを持ちたいとお考えの場合、設計段階でより多くの打合せ時間を割いて頂く必要があるからです。この打合せを行うための移動がおっくうにならない距離感も大切な要素と考えるからです。

これが工事に入った時にはどうでしょうか。ご自身が工事状況を把握されるが難しくても、設計者(監理者)は定期的に現場に通い、プロの視点でより良い建物になる様に目を配る事ができ、その状況をご報告する事ができます。もちろん、現場に近い設計者でも同じ事は可能です。

では、東京の設計事務所に仕事を依頼するメリットはそれだけでしょうか?

首都圏の多くの設計事務所はそれぞれが連携をしており、情報交換を行いながら家づくりを行っています。より深い専門的な知識や新しい技術の情報収集や交換、さらには、それを実現した実例を実際に見る事ができるオープンハウスや展示会など、日常業務の中で研鑽を行っている仲間が多くおり、より良い家づくりに活かしているといえます。ネット上では得る事のできない生の情報を持っているのです。

手前味噌ではありますが、そういった仲間が多く集まる建築家31会は、より良い家づくりのお手伝いするために、とても意味のある活動と感じている次第です。そんな我々が、積極的にお客様との出会いの機会を持つための模型展や相談会、HP、FACEBOOKなど、お気軽にご利用して頂ければ幸いです。

■大津K-HOUSE=in the Compound= 設計編

00.大津で東京の設計事務所が設計・監理をする-出会う-

01.定年を控えた単身赴任後の家をリフォームするか建替えるか

02.遠隔地で行う家づくり ハウスメーカーと設計事務所の違い

03.近畿地方の家を東京で設計する

04.遠隔地の設計で建設費用を抑える方法1

05.遠隔地の設計で建設費用を抑える方法2

■大津K-HOUSE=in the Compound= 現場監理編

00.地鎮祭_大津K-HOUSE=in the Compound=

01.祠ありきの建物位置:縄張り

02.建物を支える地盤を考える

03.基礎工事の工程:掘削工事

04.基礎工事の工程:鉄筋工事

05.基礎工事の工程:打設工事

「東砂ロードサイド by アトリエハコ」来訪記

建築家31会のメンバー、アトリエハコ建築設計事務所さんが手掛けられた「東砂ロードサイド」のオープンハウスにお邪魔して来ました。アトリエハコさんはつい先頃、建築家31会にご参加頂く事になり、それを機会にお知り合いになりましたので実作を拝見するのは初めてでした。

敷地は江東区東砂の大きな通りに面したお宅でした。

外観はシンプルな白い矩形に、開口部が大小のバランスを取りながら配置されていました。その建物の前には小振りながら緑をたたえた街路樹が1本寄り添い、木陰が白い壁をスクリーンにした様に落ちているという、大通りで一際目を引く存在感がありました。

黒い扉と黒い枠のガラスが、白い壁を鋭くえぐり取る様な形で入口ができていました。中に入ると、佐野さんが迎い入れて下さりました。道路側の間口12mに対して奥行は3.5mと今までに経験した事のないサイズ感でした。入口正面は黒い壁があり、そこを回り込む様に階段が上階につながっていました。

階段を上がった先は、ダイニングキッチンで、製作物のキッチンが据えられています。レンジフードはカウンター内からせり上がってくる物が組込まれており、ステンレス製のセンターキッチンの存在感を邪魔しません。ひときわ大きなガラスからは、先程外部から見た街路樹が見えます。これはたまたまここに立っていたそうです!また、前面道路の幅員が広く(19m)、開口部も延焼ラインから外れていたため、大きな透明ガラスを入れる事ができたとの事。敷地の良さを最大限に活かした計画となっていました。

ダイニングの上は吹抜けていました。吹抜けの両側にも開口部が設けられており、陽光がたっぷりと注ぎこむ、とても気持ちの良い空間です。

階段側を振り返ると、建物の真中に黒い壁があります。この黒い壁は箱状になっており、建物の外壁の中に、入れ子の様に内包されています。その周りを階段が取り囲み、箱を挟んだ両側がスキップフロアになっている構成でした。階段は、段板だけが壁の間に挟まっており、向こう側が見通せます。

この箱と階段がある事で、奥に何かが続いているといった感覚が生まれ、細長い建物形状の長手の奥行間がより一層、強調されていると感じました。

入れ子の黒い箱は、所々に開口が開けられ、上下階をつなぐ開口や、籠もり部屋(最近よく出会います-笑-)になるなど、空間の繋がりがとても工夫されており、それが広がりと明快さの中に複雑さを加え、建物内部の面白をさらに生んでいました。

七島さんからお伺いしたお話しでは、お施主様は内装業をされている方と云う事でした。お施主様のお仕事の仲間で内装工事が行われ、細かな納まりを相談の上、施工されていったとの事でした。特に巾木納まりは、アルミのアングルがフローリングから10ミリ程浮いた位置で止まっている納まりで、内装工事の難しさが予想されるのですが、大変奇麗に納まっていました。また、内部の壁はPBボードに塗装がなされていたのですが、その仕上がり精度が高く、横方向から壁をなめる様な光にも不陸による影が出ず、平滑に仕上がっている事が判りました。職人さん達の仕事へのこだわりを大いに感じた次第です。

空間のデザインと構造フレームの高い次元での融合と、現場を進めて行く中で思いついたアイデアを柔軟に取り込み咀嚼する「物づくりへの取り組み」など、大変に刺激と勉強になりました。七島さん、佐野さんありがとうございました。

傾斜地を活かした平屋暮らし2 K-HOUSE=in the Forest=

前回に引続きK-HOUSE=in the Forest=という長野県に建つセカンドハウスです。傾斜地に木造平屋を建てるために、その下のRC造をどのように作ったのかをご説明致しましょう。

コンクリート打設直後の様子 手前が地下室の屋根部分で奥に擁壁裏面が見える この後、型枠脱型後に土を埋め戻す

谷側からの外観で、木造平屋下のコンクリート壁は横長のファサードを構成していますが、壁の裏側は異なった使われ方をしています。

3種類の色分けをしましたが、地下室部分は必要最小限の大きさとし、その他は基本的には基礎と擁壁になります。木造住居部分より左側に伸びている擁壁部分は、平坦な屋外空間を作るための物ですが、それ以外に「土量のバランスを取る」ための壁でもあります。傾斜地に関しては、敷地内の土を何らかの形で掘削したり盛ったりといった、土の移動を伴うケースが多くなります。これは、建物内部で平らな床を作るためにおこる事で、内部の床を傾斜に合わせてなるべく土の移動を少なくする事は、工事コストを削減する上で有効な方法になります。この土を多く掘削し、敷地外に搬出しなければならない場合は、さらに処分費用が掛かる事になります。

建物を連続で輪切りにした断面 図中の紫色が掘削した土で、水色が埋め戻しに利用した土

今回は、この場外処分しなければならない土を最小限に抑えるために、地下室を作るために掘削した土を、擁壁の背後に埋め戻し、建物の基礎部分と平坦な庭部分に利用しました。

傾斜に馴染む様な外部階段も作り、敷地の起伏に寄り添う、地に根ざした外部空間ができたのではないかと思います。

  1. 平屋の魅力を考える
  2. 平屋を手に入れる上で越えなければならないハードル
  3. 平屋を建てるのに必要な土地の広さとは 平屋と土地の関係
  4. 平屋の醍醐味 内部と外部の関わり合い
  5. 内に開く平屋 中庭を持った平屋の場合
  6. 傾斜地でも平屋の暮らしを
  7. 傾斜地を活かした平屋暮らし1 K-HOUSE=in the Forest=
  8. 傾斜地を活かした平屋暮らし2 K-HOUSE=in the Forest=

傾斜地を活かした平屋暮らし1 K-HOUSE=in the Forest=

前回の「傾斜地でも平屋の暮らしを」の中で、傾斜地に平屋を建てる上で、考慮しなければならないポイントを挙げました。実際の設計で建物と地面の関係に折合いをつけるのは、平屋に限った事ではありません。今回、ご紹介するのはK-HOUSE=in the Forest=という長野県に建つセカンドハウスです。地上の住居部分は木造平屋で、その下にRC造半地下の車庫があるお宅になります。

上のCGは斜面の谷側から見た外観になります。緑色の外壁部分が木造の住居になり、その下にRC造の車庫があります(焦げ茶部分が車庫入口です)。玄関はこの外観の反対側になり、斜面の山側になります。

玄関へのアプローチ 写真左側が斜面の山側になる

こちらが住居部分の平面図になります。図面の下が斜面の山側で、上が谷側です。アプローチは斜面の山側を利用しています。

半地下の車庫は住居部分の概ね半分の面積になります(図中の水色の範囲がそれぞれの大きさになります)。図中の右側に地下室は無く、土の上に基礎を作る通常の木造と同じ作り方をしています。紫色に塗られた部分は、車庫の壁であるのと同時に、住居部分下では基礎に、それ以外の部分では擁壁になっています。これは、住居部分下の空間を有効に使うためと、住居部分の右側に土を盛り、平坦な地面を設けるための仕組みです。これにより、住居部分と地面の関係が、より近くなり、平屋としての佇まいを確保する事ができました。

擁壁と土盛りによってつくられた平場 枕木を敷いた屋外スペースになっている

次回は、ここでの工事内容をもう少し掘り下げる事にします。

  1. 平屋の魅力を考える
  2. 平屋を手に入れる上で越えなければならないハードル
  3. 平屋を建てるのに必要な土地の広さとは 平屋と土地の関係
  4. 平屋の醍醐味 内部と外部の関わり合い
  5. 内に開く平屋 中庭を持った平屋の場合
  6. 傾斜地でも平屋の暮らしを
  7. 傾斜地を活かした平屋暮らし1 K-HOUSE=in the Forest=
  8. 傾斜地を活かした平屋暮らし2 K-HOUSE=in the Forest=

 

傾斜地でも平屋の暮らしを

ここまで平屋の魅力を、敷地との関係性を交えて探って来ました。「地に根ざす」という事をイメージした時、何となく平坦な地形を思い浮かべるのではないでしょうか。

ここで,改めて、「平屋の魅力を考える」で述べた優れた点を確認してみましょう。

  • 地に根ざした暮らしが臨める
  • 水平移動で完結できる(上下移動がない)
  • 家族のコミュニケーションが図り易い
  • 構造が堅牢になる
  • 部屋の大きさに自由度が高い

果たしてこれらは平坦な土地でしか成り立たず、傾斜地では難しいのでしょうか?この中で特に相違点が生まれるのは「地に根ざした暮らしが臨める」といった項目でしょう。敷地が傾斜している事を考えると,建物の外周全てで地面と連続させるのは難しいかもしれません。ワンフロアで日常生活が完結していることからすれば「平屋の暮らしを行っている」と拡大解釈をお許し頂くとの前提で、以下に傾斜地と建物の取合いを簡単な概念図で表します。

 

A案の傾斜地に平屋を載せるイメージであれば、建物の下(基礎部分)を地面から持ち上げる柱、梁といった構造フレームが必要になります。イラストの建物左側は入口などをイメージしていますが地面との接続を行います。こちら側に関しては、建物と敷地の連続感は生まれる可能性はあります。傾斜の低い側に関しては、建物が地面から浮いている様な状態になるため、使い勝手には制限が加わり、デットスペースになってしまう事も考えられます。

上記は建物と地面の接続が傾斜地の高い側でしたが、これは低い側で行う事も考えられます。B案は、大半が地面の中に埋まる事になるため、半地下といったイメージに近くなってきます。建物の性能上、土と接する部分は木造と云う訳にはいかず(土の中には水分が多く含まれているため、水に強い材料が求められます)多くの場合は鉄筋コンクリート(以下RC)造となります。また、地中に埋める事による土の掘削とその残土処分にもコストが掛かる事になります。

A案、B案のいずれにしても、敷地が傾斜している事により、建物を作る上での何らかのコストアップは避けられない傾向にはあります。平坦な敷地に比べ設計においても立体的な検討事項が増えるため、住宅メーカーさんは敬遠しがちになり、設計事務所の得意分野ともいれるでしょう。この事が、土地の資産価値を下げる事にも繋がっており、土地価格からすると、安価に設定されているケースが多く有ります。建物のコストアップを敷地のコストダウンでカバーすると云うことも考えられるでしょう。

次回は、安価に入手した傾斜地に、ワンフロアの生活空間を設けた過去の実例を取り上げたいと思います。

 

  1. 平屋の魅力を考える
  2. 平屋を手に入れる上で越えなければならないハードル
  3. 平屋を建てるのに必要な土地の広さとは 平屋と土地の関係
  4. 平屋の醍醐味 内部と外部の関わり合い
  5. 内に開く平屋 中庭を持った平屋の場合
  6. 傾斜地でも平屋の暮らしを
  7. 傾斜地を活かした平屋暮らし1 K-HOUSE=in the Forest=
  8. 傾斜地を活かした平屋暮らし2 K-HOUSE=in the Forest=

内に開く平屋 中庭を持った平屋の場合

外部空間と積極的な関わりを持つ事ができる平屋ですが、地続きになっている事による敷地及び敷地外との折合いの付け方も重要になります。平屋を建てる上で必要になる敷地の理想的な広さが、敷地周辺との境界線を長くする傾向にあるため、そこをどのようにするかの配慮が必要になります。開口に繋がる外部空間をコントロールできるのは、自分の敷地の中だけになりますので、借景が出来る様な場合は、積極的に境界を見えなくするなども、デザイン上は効果的かもしれません。ただ、プライバシーを確保する観点や防犯上の話からすると、地上階の開口部が多く外部空間との親和性が高い分、外からの接触には弱点を持っているともいえます。

より、高いプライバシーを確保した外部空間をどのように確保するか・・・

一つの答えとして、以前に検討を行った中庭を内包した平屋をご紹介します。

大通りの喧噪から少し距離をおいた敷地は、市街化調整区域の中にあり、農耕地も多く残る良好な環境でした。南と東には遮るものがなく、陽光がたっぷりと注ぐ、水平の広がりを持った希有な条件を備えています。敷地北側は新たに開発された宅地となり、新しく家が建ち始めました。木更津市も農地を残しながら、宅地開発を行う方向性を打ち出しており、今後も新たな住宅が増えて行く傾向にありますが、ゆとりを持った市街化が進むと思われ、良好な環境は担保される可能性が高いです。計画道路が敷設された折には、周辺環境の変化が見られるかもしれませんが、緑の多い風景はこれからも続くと思われます。

当初のご提案では、この様な敷地の持つ田園風景を室内から眺めるご提案をしましたが、防犯やプライバシーの確保をお望みという事で、中庭を設け、内側の開口を多く取る計画を行いました。以下がその時のコンセプトイメージになりますが、建物外周部は壁を多めに設定し、家の中心となる中庭に周りを諸室が取り囲む配置計画です。

居間、ダイングキッチンと家族が集まる諸室は中庭に向って、開き、よりプライベート性の高まる部屋は、その奥に配置しています。各部屋の間に細い抜けを設け、外部との繋がりは確保しつつ、あくまでも中庭は内向きに作るといったご提案でした。

中庭を介する事で、回廊ができ、親子の個室にも適度な距離感が生まれたのは副産物といえるかもしれません。また、水廻りもコンパクトにまとめる事ができ家事動線にも使い易さが、居間と一体利用も可能な和室は奥に配置されているため、家全体の中でも独立性を高める事ができたと思います。

  1. 平屋の魅力を考える
  2. 平屋を手に入れる上で越えなければならないハードル
  3. 平屋を建てるのに必要な土地の広さとは 平屋と土地の関係
  4. 平屋の醍醐味 内部と外部の関わり合い
  5. 内に開く平屋 中庭を持った平屋の場合
  6. 傾斜地でも平屋の暮らしを
  7. 傾斜地を活かした平屋暮らし1 K-HOUSE=in the Forest=
  8. 傾斜地を活かした平屋暮らし2 K-HOUSE=in the Forest=

 

 

平屋の醍醐味 内部と外部の関わり合い

平屋の特徴の一つである「地に根ざした建築」は建屋と外部空間の関係を積極的に作り込む事でさらに魅力が増します。平屋の良さを活かすためには、外部空間を効果的に設ける事が少なからず必要と思われます。そのためには少しでも建蔽率、容積率にゆとりがある敷地に建てる事が、平屋づくりを成功させる鍵の一つといえるでしょう。

■地面と建屋の連続感

居室(リビング、ダイニング、寝室など)は採光、換気のために家の外周部に配置される事が一般的です。平坦な地盤であれば、建屋の外周全てが外部空間と接している事になります。地面と室内の床面が近い平屋は、各部屋で外部空間との繋がりを持つ事が望めます。

■外部空間と建屋を効果的につなぐ開口部

建屋の周りに外部空間を設け、室内からもそれを楽しむためには開口部が必要です。外部と内部がより効果的な関わり合いになる様な、開口部の取り方が大切になってきます。外部空間との関係をいかに建物で表現するか、和風建築は我々に多くのインスピレーションを与えてくれます。

・内部と外部の連続感を強調する様な開口

・風景の一部を切り取る額縁の様な開口

・方角によって大きさ形状を使い分ける開口

・強い光を入れる開口、弱い光を入れる開口

・スクリーン(格子,障子など)を設けた開口

四季折々の自然を身近に感じていた我々日本人に染込んでいる感性を大いに刺激してくれますね。

■床の連続感

内部と外部の連続感を強調する大きな開口を設けたとします。この効果を高める重要な要素として、床の連続感があります。室内から外部の風景を眺める時に、床が段差なく開口の外まで繋がっている事で、移動するという物理的な連続性もさる事ながら、移動できそうだと感じさせる事が、連続感を生み出す要因になります。

M-HOUSE=INSIDE AND OUTSIDE= ダイニングキッチンから屋外デッキ、プールに繋がる開口

■軒の出が生む内外の曖昧さ

屋根で覆われている事は、建物の下にいるといった感覚が生まれるのですが、その軒の出の長さと高さの関係は重要です。長さが高さより勝っている程,より内部にいるといった意識を強く感じさせる効果があります。外部であるのに内部的と感じる事が,内外の曖昧さを生み、内部空間と外部空間の一体感をより増す事になります。

M-HOUSE=INSIDE AND OUTSIDE= 矩計図 軒の長さと高さは概ね1対1で作られています

■屋根高さを抑える事による効果

平屋は建屋が1層で完結しているため、壁面の高さが低く、自ずと軒先の高さも抑えられます。これは外部から建物をみた時に、その大きさがコンパクトに感じられ、より身近なスケール感を得る事ができるでしょう。庭の植栽や樹木の高さと建物が呼応する様な関係が生まれ、より「地に根ざした建築」に近づく事が出来るのです。

  1. 平屋の魅力を考える
  2. 平屋を手に入れる上で越えなければならないハードル
  3. 平屋を建てるのに必要な土地の広さとは 平屋と土地の関係
  4. 平屋の醍醐味 内部と外部の関わり合い
  5. 内に開く平屋 中庭を持った平屋の場合
  6. 傾斜地でも平屋の暮らしを
  7. 傾斜地を活かした平屋暮らし1 K-HOUSE=in the Forest=
  8. 傾斜地を活かした平屋暮らし2 K-HOUSE=in the Forest=

平屋を建てるのに必要な土地の広さとは 平屋と土地の関係

平屋を持つには、それなりの敷地の広さが必要な事を前回の「平屋を手に入れる上で越えなければならないハードル」の中でご説明しました。では、敷地は具体的にどれくらいの広さが必要なのでしょうか。

今回取り上げるのは、以前に弊社で設計した栃木県芳賀町に新築した戸建住宅M-HOUSE =INSIDE AND OUTSIDE= です。簡単な概要は以下のとおりです。

敷地面積:331.07㎡(敷地全体:1029.2㎡)

延床面積:119.25㎡

法定建蔽率:60%

法定容積率:200%

家族構成:夫婦、子供1人

平屋PLAN

 

間取りは、リビングキッチンと個室が2室、水廻りと玄関、収納で構成されています。これら全ての合計面積が、上記の延床面積:119.25㎡になります。一般的な夫婦と子供の3人暮らしとしては、少し広めといえるかもしれません。

これを2階建てにした場合、どのようになるでしょうか。必要な諸室、機能は変えずに、それぞれの面積も可能な限り踏襲した間取りが以下になります。

2階建PLAN

 

1階に玄関、寝室、水廻り、2階にリビング、ダイニング、キッチンと振分け、玄関に階段室を接続させました。上図により建築面積は78.17㎡、延床面積は145.33㎡ になりました。

建物側から求められる必要敷地面積としては、建築面積を建蔽率で割る事で算出してみます。※平屋の場合は延床面積=建築面積として計算します

平屋:119.25㎡÷0.6=198.75㎡ 延床面積(=建築面積)÷建蔽率(60%)

2階: 78.17㎡÷0.6=130.28㎡ 建築面積÷建蔽率(60%)

198.75㎡÷130.28㎡=1.53倍  平屋必要敷地面積÷2階建必要面積

単純な面積比較になってしまいますが、同等の機能を持たせた住宅の場合、平屋は、2階建てより、敷地面積として概ね1.5倍から2倍弱の広さが必要になると思われます。

 

因に、延床面積の比較ではどうなるでしょうか。

119.25÷145.33㎡=0.82倍  平屋延床面積÷2階建延床面積

平屋の場合、階段などが不要なため、概ね2割程度の面積削減が可能といえます。この削減分による建物側の減額効果はどれくらいでしょうか。仮に建物の工事単価を250,000円/㎡(=約80万円/坪)とすると、削減面積ー25㎡による机上の減額効果は600万円、実際には平屋の施工単価が高い事を考慮しても、500万円前後の減額は見込めると予想されます。これを、必要敷地面積の差分の+70㎡で割ると

5,000,000円÷70㎡ = 71,428円/㎡

約7万円/㎡の土地価格であれば、バランスする事になります。都内の平均坪単価は80万円前後といわれています。都心から離れる事で坪単価は下がってゆくので、どの辺りのエリアを選ぶかで平屋実現の可能性は出て来ると思われます。

=参考=

2016年の土地価格相場

[東京都]青梅市 :10万7400円/㎡

[東京都]日の出市:7万7680円/㎡

[神奈川県]箱根町:7万8016円/㎡

[神奈川県]真鶴町:6万7142円/㎡

[埼玉県]鴻巣市 :7万0752円/㎡

[千葉県]四街道市:6万4635円/㎡

  1. 平屋の魅力を考える
  2. 平屋を手に入れる上で越えなければならないハードル
  3. 平屋を建てるのに必要な土地の広さとは 平屋と土地の関係
  4. 平屋の醍醐味 内部と外部の関わり合い
  5. 内に開く平屋 中庭を持った平屋の場合
  6. 傾斜地でも平屋の暮らしを
  7. 傾斜地を活かした平屋暮らし1 K-HOUSE=in the Forest=
  8. 傾斜地を活かした平屋暮らし2 K-HOUSE=in the Forest=

「都市でも気持ちよく住まう家 by有限会社 菰田建築設計事務所」来訪記

建築家31会のメンバー、有限会社 菰田建築設計事務所さんの手掛けられた「都市でも気持ちよく住まう家」のオープンハウスにお邪魔して来ました。

ご夫婦で手掛けられる菰田さんの建築は写真や模型では拝見しており、丁寧な作り込みには感心しておりましたが、実際の建物を体験するのは初めてだったので、期待に胸を踊らせて伺いました。

敷地は三軒茶屋の交差点からほど近い所で、国道246号線沿いのビル群を背景にした細い路地が続く住宅街の中にありました。大通りが直ぐ近くなのですが、通り沿いのビル群が屏風の様に建ち並んでいるおかげで、通りの喧騒はあまり届いてこず、思いがけない程の静けさがありました。

白と自然木を基調とした外観は飾り気を排したシンプルな潔さでまとめられています。外回りをうろうろと拝見していると、菰田さんが玄関先で出迎えてくれました。

路地をくぐる様にして玄関扉を抜けて繋がるシューズクローゼット周りを土足のまま進むと、天井が高くなり、側壁の開口から取られた柔らかい明るさを持った広がりのある土間空間に変化します。この土間が1階を端から端まで貫き、そこに直接面した形で子供部屋がありました。土間と部屋の間には壁や扉が無く、腰掛けの高さに設定された床段差が縁側的なイメージも与えます。まだお子さんが小さいため、あえて間仕切り壁などは設けず、将来的には分割を行なえる様なフレキシブルな平面形状と、設備の増設に対応した仕込みは行われているという、練り上げられた空間でした。小学校に上がる頃には、友達がたくさん集まっても大丈夫であろう広がりのあるワンフロアの遊び場が想像できました。

階段を登った2階はリビング、キッチンがある生活の中心フロアです。

大きく取られた開口から入る光と、間仕切りを極力排した間取りにより、室内の広さが感じられます。登ってきた階段を振り返ると、3階への階段は壁からスチールの支柱で支えられた、軽やかな踏み板が壁から跳ね出しています。部材の細さが軽さをさらに強調しており、上から落ちて来る光と絡み回転しながら上昇感を生んでいました。構造的には階段外周の壁内部に段板の支持部材が埋め込まれ隠さており、壁からは細い部材のみが取り付いており軽やかさが強調されています。菰田さん渾身のディテールでしょう。

内装は白色と木目がバランス良く配され、大きな開口から光の入る明るい生成りの空間でした。

その一角に2畳に満たないひときわコンパクトは暗がりのスペースがありました。これは篭り部屋で、明るさを抑えた小さな空間で、壁に囲まれた床全面に青を基調とした柄のクッションが敷き詰めらていました。

青いクッションと壁の篭り部屋 当初「子守り」部屋と記述しておりましたが、ご本人から「篭り」とのコメント頂きました(!)大変失礼致しました・・・。

これはお客様のアイデアを元に作られたそうで、クッションの柄もご自身で選ばれたそうです。その色柄に呼応する様に壁も青色に塗られた空間は、何とも落ち着ける「囲まれ感」がありました。空間は比較的明るさを考慮する事が多い中、あえて暗がりを作る所に、新鮮さとセンスの良さを感じました。

キッチンの背面に据え付けられた造作家具はオープンな収納になっていました。ここに一つずつお気に入りの食器や小物が並んでゆく事で、さらに素敵な家ができ上がる事が想像できる、住み手に寄り添った素敵なお宅でした。