建築家31会

遠隔地の設計で建設費用を抑える方法2

この投稿は建築家31会のブログリレー「ばとろぐ_2017/03/25」を一部加筆したものです。

減額を盛込んだ実施設計を何とかまとめ、概算見積を行った施工者にいよいよ本見積りを取る事になりました。基本設計時の予算超過を受けて、施工面積の削減や、中庭を無くす事による建物構成の簡略化、材料の見直しなど減額要素が加わるため、概算見積りよりも安価な金額が出て来る事が予想されました。

ところが、1社に関しては、概算見積り時と殆ど変わらない金額積み上げが、別の1社は見積内容に落ちがある箇所が散見されるなど半ば辞退するような内容でした。最後の1社は希望予算に近づけるために、熱心に調整を行ってくださりましたが、結果的に折り合う事が出来ず、更なる計画の見直しを行う必要が出て来ました。

しばらくの休止期間がありましたが、新たな施工者をお客様からご推薦頂き、減額提案を協議しながら仕切り直しを行う事になりました。

  1. ご要望の見直し
  2. 面積のさらなる減少
  3. 屋根形状を寄棟から切妻に変更
  4. 素材の変更
  1. 特にご要望によってグレードを高めていた水廻り設備に関しては、仕様の見直しを頂き、10%の圧縮を行いました。
  2. 建物サイズをもうひとしぼり小さくし、ほんの数十万円ですが減額を加えました。
  3. 最も大きな変更になりました。これにより、屋根面積はさほど変わりませんでしたが、木軸の材料費と大工手間の減額効果が高く、外壁の増加分を差し引いてもおつりが来る程でした。
  4. 材料関係のメーカー指定を極力排し、施工者さんが安く仕入れることのできる代替品に置き換えました。また、仕上のグレードも可能な限り性能を確保しながら減額に結び着ける様に調整致しました。

上記の変更と、何よりも施工者さんの心意気と密なコミュニケーションを取る事によって、本見積りを行った最安値から、さらに15%圧縮した金額(概算見積時からは概ね29%の圧縮)で契約に漕ぎ着けることができました。ここまでおつき合い頂きましたお施主様を始め、多くの施工者さんのご厚意に改めて感謝致します。本当にありがとうございました。

■大津K-HOUSE=in the Compound= 設計編

00.大津で東京の設計事務所が設計・監理をする-出会う-

01.定年を控えた単身赴任後の家をリフォームするか建替えるか

02.遠隔地で行う家づくり ハウスメーカーと設計事務所の違い

03.近畿地方の家を東京で設計する

04.遠隔地の設計で建設費用を抑える方法1

05.遠隔地の設計で建設費用を抑える方法2

■大津K-HOUSE=in the Compound= 現場監理編

00.地鎮祭_大津K-HOUSE=in the Compound=

01.祠ありきの建物位置:縄張り

02.建物を支える地盤を考える

03.基礎工事の工程:掘削工事

04.基礎工事の工程:鉄筋工事

05.基礎工事の工程:打設工事

遠隔地の設計で建設費用を抑える方法1

この投稿は建築家31会のブログリレー「ばとろぐ_2017/03/24」を一部加筆したものです。

初回ご提案の内容は、おかげ様でお客様に気に入って頂く事ができました。幾つかのさらなるご要望を元に手直しを加えた上で、引続き内容を詰めて行く事となりました。ただ、手放しで進められる訳ではなく、ご予算とのバランスには少々懸念が残りました。特に今回は、大津で施工者を新規に探す必要があります。過去に仕事を一緒に行った事のある施工者であれば、図面に描かれている内容が、現場でどのように納まりが付いてゆくかの予想がある程度できますが、始めての場合はそうは行きません。見積を行う際に、図面だけでは見えて来ない設計者と施工者の間の調整事に保険を掛ける意味で,金額が高く出てくる可能性が考えられました。

そういった想いはお客様とも共有できていたため、詳細の設計を進めて行く前に、ザックリとした金額の掴みを行いたいと思い、先日のバトログでも書かせて頂きましたが、基本設計の段階で「概算見積り」を行う事にしました。これに関しては、地元で候補となりそうな施工者を3者ほど選定し、相見積をとりました。結果的には、この予想が的中した感じで、東京での相場より高めに見積が上がって来たため、設計の見直しに取り掛かりました。減額に向けての有効な手段として

  1. 床面積を減らす
  2. 外壁の面積を減らす
  3. 仕様を変更する

といった事が考えられます。

  1. に関しては、お施主様のご要望による条件と少なからず調整が必要になります。特に、リビング、キッチン、ダイニング、個室といった部分は、実際に家ができ上がった後に、直に接する空間(気積)となりますので、十分なお話しあいを行いました。また、玄関、廊下、階段などの共用部をコンパクトにする事で、全体の面積は概ね17%圧縮する事ができました。
  2. 今回のケースでいえば中庭がある事により、外壁面積は増えておりました。そもそもの始まりが中庭のある模型にご興味を頂いた事からスタートしていたため、これを無くす事は非常に大きなご判断を頂く事になると考えておりました。ところが何と、お客様から発想の転換となるご提案頂く事になります。外部の様な明るさを持った、吹抜けを玄関部分に取入れ、2階リビングと大型ガラスで繋げるといったものです。上記1の面積減と併せた外壁の工事金額は概ね40%、建具関係で概ね18%圧縮することができました。
  3. 仕上材や設備のグレードにも見直しを掛けました。特に仕上材に関しては同じ材種でコストを下げると、単にグレードダウンする事になりますが、素材を置き換えながら性能と意匠性を担保しコストダウンを図るVE(バリューエンジニアリング)を我々は提案致します。これには経験則が非常にものをいいますので、ある意味、その設計者の力量が試される事にもなります。

上記トータルで、工事費全体としては14%程度の減額が見込まれました。この様な段階を踏みながら、主要な部屋は残しつつ、更新したPLANができ上がりました。これを元に実施設計に取り掛かりましたが、工事契約に向けては、さらに越えなければならないハードルが幾つも待ち受けておりました・・・。

■大津K-HOUSE=in the Compound= 設計編

00.大津で東京の設計事務所が設計・監理をする-出会う-

01.定年を控えた単身赴任後の家をリフォームするか建替えるか

02.遠隔地で行う家づくり ハウスメーカーと設計事務所の違い

03.近畿地方の家を東京で設計する

04.遠隔地の設計で建設費用を抑える方法1

05.遠隔地の設計で建設費用を抑える方法2

■大津K-HOUSE=in the Compound= 現場監理編

00.地鎮祭_大津K-HOUSE=in the Compound=

01.祠ありきの建物位置:縄張り

02.建物を支える地盤を考える

03.基礎工事の工程:掘削工事

04.基礎工事の工程:鉄筋工事

05.基礎工事の工程:打設工事

近畿地方の家を東京で設計する

この投稿は建築家31会のブログリレー「ばとろぐ_2017/03/23」を一部加筆したものです。

設計に取り掛かるにあたり、お客様のご希望を伺う事は全ての始まりになります。今回ご縁を頂いた大津のお客様は、自由が丘の模型展でお知り合いになった事は既にお伝え致しました。イベントでは数組の建築家が模型と写真を持ち寄って、どのような仕事を行ってきたかのご説明も行っているのですが、この時に持参した「中庭」のある案件の模型にご興味を持って頂いた事が、直接お声掛けを頂くきっかけとなりました。家づくりを行う上でのご要望は、前々回のバトログ「定年を控えた単身赴任後の家をリフォームするか建替えるか」で書かせて頂きましたが、建物計画上の主なご希望は以下のとおりでした。

  1. 建物は木造2階建て
  2. 中庭を取り囲む様に部屋を配置したい
  3. 2階にリビング、キッチン、ダイニング、水廻り、寝室を設ける
  4. 1階に和室、子供部屋、車庫(2台駐車)

特に2階には日常的に使う機能をまとめ、上下移動を少なくしたワンフロアでの生活を望まれていました。これらのご要望を頂くのと併せて、実際に敷地を拝見させて頂く機会を持ち、どのように計画に盛込むかを模索する事になります。敷地周辺のフィールドワークは、2013年のバトログ「原風景に想うこと3」でも書かせて頂きましたので、併せてご覧頂けますと幸いです。

敷地は間口がより奥行が深い町屋独特の地形で、現在のお宅は、前面道路に面して建っており、母屋を挟んだ反対側に庭がありました。この庭部分に新居を計画します。ご要望の2台分の車庫(並列駐車)を道路側に設ける事により、建物の間口方向の幅はある程度、定まって来る事になりました。これに中庭、母屋、さらに奥庭を並べてゆき側面にアプローチの通路で繋げる事で、空間構成も町屋をイメージさせるものとなりました。2階は中庭を囲む様にリビング、ダイニングを配し、来客の見込まれるキッチン周りは、道路側に広めのテラスを設け、2面からの採光が望める明るい空間としました。よりプライベート性の高い寝室と水廻りは奥庭に面しています。

  • 所在地:滋賀県大津市
  • 構 造:木造在来工法地上2階
  • 用 途:専用住宅

■大津K-HOUSE=in the Compound= 設計編

00.大津で東京の設計事務所が設計・監理をする-出会う-

01.定年を控えた単身赴任後の家をリフォームするか建替えるか

02.遠隔地で行う家づくり ハウスメーカーと設計事務所の違い

03.近畿地方の家を東京で設計する

04.遠隔地の設計で建設費用を抑える方法1

05.遠隔地の設計で建設費用を抑える方法2

■大津K-HOUSE=in the Compound= 現場監理編

00.地鎮祭_大津K-HOUSE=in the Compound=

01.祠ありきの建物位置:縄張り

02.建物を支える地盤を考える

03.基礎工事の工程:掘削工事

04.基礎工事の工程:鉄筋工事

05.基礎工事の工程:打設工事

遠隔地で行う家づくり ハウスメーカー、工務店と設計事務所の違い

この投稿は建築家31会のブログリレー「ばとろぐ_2017/03/22」を一部加筆したものです。

家づくりをスタートされる時に、どこに仕事を依頼するかの選択肢が幾つかある事は皆様も既にご存知かもしれません。我々の様な設計事務所に仕事を依頼する以外にも、ハウスメーカーや工務店、建設会社に設計から依頼される方は多いと思います。

今回のテーマである現在の居住地と施工計画地が離れている場合、上記の選択肢である、ハウスメーカー、工務店、建設会社に仕事を依頼した場合、どのような進み方をするでしょうか。

全国区をカバーする大手ハウスメーカーは、各地に営業所を持ち、設計・施工とも、どの場所、地域においても対応が可能でしょう。例えば、東京で打合せを行い、施工段階では敷地最寄りの施工チームが受け持つ様なイメージになります。間取りや仕様に関しても,メーカー独自のルールが定まっているため、一定水準を保った住宅ができ上がる事は間違いありません。ただし、共通ルールが多い分、選択肢の自由度は制限される事にはなります。

工務店、建設会社の場合は、地域に根ざした仕事を行っている事が多いため、計画敷地へ工事に出向く事が出来る距離感が重要になります。打合せにも、ある程度の移動条件が加わる可能性があります。また、設計より施工を重視する傾向にあります。設計段階での打合せは移動距離を伴う可能性が高く、その心構えが必要になるでしょう。

今回の大津での計画では、打合せの窓口を担って下さった旦那様に合わせて、東京で設計段階での物事が決まってゆきました。設計事務所ならではの提案力とお施主様のご希望を柔軟に、多く盛込む事ができるという事は大きなメリットといえるでしょう。設計事務所は基本的には施工ができないため、工事に関しては地元の施工者にお願いする事になります。工事段階においては、お施主様の代わりに専門的な目で施工会社の仕事ぶりを確認、指導する事ができ、より良い住宅を作る一助になります。

ただ、この様に設計事務所に依頼する事はメリットばかりではありません。まず、契約に関しては、設計契約と工事契約をそれぞれ結んで頂く必要があり、ワンストップで全ての契約が完了する設計・施工のハウスメーカーや工務店より手間が掛かります。下図は当初の工程表になります。流れとしては、設計契約を結んだ後に、設計を進め、図面が揃った段階で、施工者に見積を行い、金額が折り合った後に、工事契約となります。設計段階では、目標予算を元に進めて行きますが、施工者に見積を取る段階まで、正確な金額が判らないと行った事になります。この辺りのご予算と設計内容の齟齬を防ぐため、我々は設計途中に概算見積りを取る事を行います。下図の赤文字の通り、概算見積りを行った後に、設計内容の見直しを行ってから実施設計を行い、本見積りへと進みました。

今回のケースでは慎重に事を進めたのですが、実際には知り合いが殆ど不在の関西での初仕事であった事もあり、少なからず困難が待ち受けておりました・・・。

■大津K-HOUSE=in the Compound= 設計編

00.大津で東京の設計事務所が設計・監理をする-出会う-

01.定年を控えた単身赴任後の家をリフォームするか建替えるか

02.遠隔地で行う家づくり ハウスメーカーと設計事務所の違い

03.近畿地方の家を東京で設計する

04.遠隔地の設計で建設費用を抑える方法1

05.遠隔地の設計で建設費用を抑える方法2

■大津K-HOUSE=in the Compound= 現場監理編

00.地鎮祭_大津K-HOUSE=in the Compound=

01.祠ありきの建物位置:縄張り

02.建物を支える地盤を考える

03.基礎工事の工程:掘削工事

04.基礎工事の工程:鉄筋工事

05.基礎工事の工程:打設工事

定年を控えた単身赴任後の家をリフォームするか建替えるか

この投稿は建築家31会のブログリレー「ばとろぐ_2017/03/21」を一部加筆したものです。

ブログを書いている本日は2017年の3月ですので、お施主様とお会いしてから既に4年近くが経とうとしています。実は紆余曲折がありまして、来週末に地鎮祭を行うという、まさに現在進行形のお宅になります。前回シリーズのバトログでご紹介した[PLUS自由が丘]も「建築家サロンin自由が丘」の会場のご近隣にお住まいになられているお客様からご縁を頂きましたが、今回ご紹介する[K-HOUSE=in the Compound=]も、ご自宅から駅までの通りすがりに、たまたま模型展をご覧になられた事から始まっています。

概ね40年前にご自宅を大津に建てられ、現在は旦那様が単身赴任で東京にお住まいになり、週末に帰省されております。数年後に控えた定年退職と、お二人のお嬢様がご結婚を機にご自宅から出られるなど、生活を取り巻く環境の変化に合わせて、住まい方を見なおすタイミングが訪れていました。お話しを頂いた当初は現在のお住まいにフルリフォームを掛けるか、新たに一戸建てを建てるかで比較検討をされておりました。その中で実現されたいポイントは概ね以下になります。

1. 部屋数や収納量などをこれからの生活スタイルに合わせたい

2. お料理の好きな奥様が快適に使えるキッチンをつくりたい(お料理教室も行いたい)

3. 断熱性能を上げたい

4. 特に玄関を明るくしたい

5. 工事金額は抑えたい

上記のご希望に対して、フルリフォームと新築のメリット・デメリットを比較し、最終的には以下のポイントで新築される事を選択されました。

1. →リビング、ダイニング、キッチンを一体にした、広めの一室をご希望になり、構造フレームの制約のあるリフォームでは理想的な空間を得るのが難しかった。生活を主に2階フロアで完結したいといったご要望もあり水廻りを現在の1階から移動する必要があった。

2. →収納量を増やすと共に、お料理教室での使用を見越した対面式キッチンを計画。7脚の椅子を設けるダイニングテーブルと組み合わせるための間取りを確保する必要があった。

3. →近年の断熱性能基準に合わせるためには、内装を全て剥がし、断熱を強化する必要があり、建物の基本構造から手直しする必要が生じた。

4. →明るさと同時に、玄関の広さを確保する事が望まれた。

5. →上記の内容を加味してリフォームを行うと工事金額が新築とあまり変わらなかった

さらに今回は、敷地にゆとりがあり、建替えではなかった事も新築を選ばれた大きな要素の一つといえるでしょう。工事中も仮住まいを確保する必要も無く、新築部分の引渡しが完了した後に、引越のための梱包なども最小限に抑えながらマイペースで少しずつ家財道具を移し、最終的には現在のお宅を取り壊せば良いといった流れは、毎日の生活に大きな負担が掛からない事も、新築を行う上でのハードルを下げた様に思われます。

建替えを行った場合の進行フロー

■大津K-HOUSE=in the Compound= 設計編

00.大津で東京の設計事務所が設計・監理をする-出会う-

01.定年を控えた単身赴任後の家をリフォームするか建替えるか

02.遠隔地で行う家づくり ハウスメーカーと設計事務所の違い

03.近畿地方の家を東京で設計する

04.遠隔地の設計で建設費用を抑える方法1

05.遠隔地の設計で建設費用を抑える方法2

■大津K-HOUSE=in the Compound= 現場監理編

00.地鎮祭_大津K-HOUSE=in the Compound=

01.祠ありきの建物位置:縄張り

02.建物を支える地盤を考える

03.基礎工事の工程:掘削工事

04.基礎工事の工程:鉄筋工事

05.基礎工事の工程:打設工事

大津で東京の設計事務所が設計・監理をする-出会う-

この投稿は建築家31会のブログリレー「ばとろぐ_2017/03/20」を一部加筆したものです。

今週のばとろぐを担当する石川利治です。今回は2013年4月に行った建築家31人会の分科会「建築家サロンin自由が丘vol.2」でお知り合いになったお客様と進めております[K-HOUSE=in the Compound=]という戸建住宅のお話を中心に進めて行きたいと思います。1週間、宜しくお願い致します。

さて、テーマに掲げました“東京の設計事務所”とはどういったものでしょうか?これは”東京”を”首都圏”と置き換えて頂いても構いません。事業所を首都圏に構えている場合、多くの場合は関東近隣までの範囲で仕事をする事が多くなります。これは首都圏にいらっしゃるお客様からご依頼を受けるケースが多いため、建物を計画する敷地に関してもそこから大きく離れる事はあまり無いためです。人口が多く集まっている首都圏には、それだけ多くの設計事務所が存在しています。

それでは、今のお住まいと離れた場所に計画地がある場合はどうでしょう。故郷の土地に家を建てるケース、別荘やセカンドハウスを計画されるケース、場合によっては今後の赴任地が変わる事もあるでしょう。この時に、設計者は現在のお住まいに近いのと、計画敷地に近いのではどちらが良いのでしょうか?

個人的には、前者をお薦めしたいと思います。それは、理想の住まいを持ちたいとお考えの場合、設計段階でより多くの打合せ時間を割いて頂く必要があるからです。この打合せを行うための移動がおっくうにならない距離感も大切な要素と考えるからです。

これが工事に入った時にはどうでしょうか。ご自身が工事状況を把握されるが難しくても、設計者(監理者)は定期的に現場に通い、プロの視点でより良い建物になる様に目を配る事ができ、その状況をご報告する事ができます。もちろん、現場に近い設計者でも同じ事は可能です。

では、東京の設計事務所に仕事を依頼するメリットはそれだけでしょうか?

首都圏の多くの設計事務所はそれぞれが連携をしており、情報交換を行いながら家づくりを行っています。より深い専門的な知識や新しい技術の情報収集や交換、さらには、それを実現した実例を実際に見る事ができるオープンハウスや展示会など、日常業務の中で研鑽を行っている仲間が多くおり、より良い家づくりに活かしているといえます。ネット上では得る事のできない生の情報を持っているのです。

手前味噌ではありますが、そういった仲間が多く集まる建築家31会は、より良い家づくりのお手伝いするために、とても意味のある活動と感じている次第です。そんな我々が、積極的にお客様との出会いの機会を持つための模型展や相談会、HP、FACEBOOKなど、お気軽にご利用して頂ければ幸いです。

■大津K-HOUSE=in the Compound= 設計編

00.大津で東京の設計事務所が設計・監理をする-出会う-

01.定年を控えた単身赴任後の家をリフォームするか建替えるか

02.遠隔地で行う家づくり ハウスメーカーと設計事務所の違い

03.近畿地方の家を東京で設計する

04.遠隔地の設計で建設費用を抑える方法1

05.遠隔地の設計で建設費用を抑える方法2

■大津K-HOUSE=in the Compound= 現場監理編

00.地鎮祭_大津K-HOUSE=in the Compound=

01.祠ありきの建物位置:縄張り

02.建物を支える地盤を考える

03.基礎工事の工程:掘削工事

04.基礎工事の工程:鉄筋工事

05.基礎工事の工程:打設工事

「東砂ロードサイド by アトリエハコ」来訪記

建築家31会のメンバー、アトリエハコ建築設計事務所さんが手掛けられた「東砂ロードサイド」のオープンハウスにお邪魔して来ました。アトリエハコさんはつい先頃、建築家31会にご参加頂く事になり、それを機会にお知り合いになりましたので実作を拝見するのは初めてでした。

敷地は江東区東砂の大きな通りに面したお宅でした。

外観はシンプルな白い矩形に、開口部が大小のバランスを取りながら配置されていました。その建物の前には小振りながら緑をたたえた街路樹が1本寄り添い、木陰が白い壁をスクリーンにした様に落ちているという、大通りで一際目を引く存在感がありました。

黒い扉と黒い枠のガラスが、白い壁を鋭くえぐり取る様な形で入口ができていました。中に入ると、佐野さんが迎い入れて下さりました。道路側の間口12mに対して奥行は3.5mと今までに経験した事のないサイズ感でした。入口正面は黒い壁があり、そこを回り込む様に階段が上階につながっていました。

階段を上がった先は、ダイニングキッチンで、製作物のキッチンが据えられています。レンジフードはカウンター内からせり上がってくる物が組込まれており、ステンレス製のセンターキッチンの存在感を邪魔しません。ひときわ大きなガラスからは、先程外部から見た街路樹が見えます。これはたまたまここに立っていたそうです!また、前面道路の幅員が広く(19m)、開口部も延焼ラインから外れていたため、大きな透明ガラスを入れる事ができたとの事。敷地の良さを最大限に活かした計画となっていました。

ダイニングの上は吹抜けていました。吹抜けの両側にも開口部が設けられており、陽光がたっぷりと注ぎこむ、とても気持ちの良い空間です。

階段側を振り返ると、建物の真中に黒い壁があります。この黒い壁は箱状になっており、建物の外壁の中に、入れ子の様に内包されています。その周りを階段が取り囲み、箱を挟んだ両側がスキップフロアになっている構成でした。階段は、段板だけが壁の間に挟まっており、向こう側が見通せます。

この箱と階段がある事で、奥に何かが続いているといった感覚が生まれ、細長い建物形状の長手の奥行間がより一層、強調されていると感じました。

入れ子の黒い箱は、所々に開口が開けられ、上下階をつなぐ開口や、籠もり部屋(最近よく出会います-笑-)になるなど、空間の繋がりがとても工夫されており、それが広がりと明快さの中に複雑さを加え、建物内部の面白をさらに生んでいました。

七島さんからお伺いしたお話しでは、お施主様は内装業をされている方と云う事でした。お施主様のお仕事の仲間で内装工事が行われ、細かな納まりを相談の上、施工されていったとの事でした。特に巾木納まりは、アルミのアングルがフローリングから10ミリ程浮いた位置で止まっている納まりで、内装工事の難しさが予想されるのですが、大変奇麗に納まっていました。また、内部の壁はPBボードに塗装がなされていたのですが、その仕上がり精度が高く、横方向から壁をなめる様な光にも不陸による影が出ず、平滑に仕上がっている事が判りました。職人さん達の仕事へのこだわりを大いに感じた次第です。

空間のデザインと構造フレームの高い次元での融合と、現場を進めて行く中で思いついたアイデアを柔軟に取り込み咀嚼する「物づくりへの取り組み」など、大変に刺激と勉強になりました。七島さん、佐野さんありがとうございました。

「都市でも気持ちよく住まう家 by有限会社 菰田建築設計事務所」来訪記

建築家31会のメンバー、有限会社 菰田建築設計事務所さんの手掛けられた「都市でも気持ちよく住まう家」のオープンハウスにお邪魔して来ました。

ご夫婦で手掛けられる菰田さんの建築は写真や模型では拝見しており、丁寧な作り込みには感心しておりましたが、実際の建物を体験するのは初めてだったので、期待に胸を踊らせて伺いました。

敷地は三軒茶屋の交差点からほど近い所で、国道246号線沿いのビル群を背景にした細い路地が続く住宅街の中にありました。大通りが直ぐ近くなのですが、通り沿いのビル群が屏風の様に建ち並んでいるおかげで、通りの喧騒はあまり届いてこず、思いがけない程の静けさがありました。

白と自然木を基調とした外観は飾り気を排したシンプルな潔さでまとめられています。外回りをうろうろと拝見していると、菰田さんが玄関先で出迎えてくれました。

路地をくぐる様にして玄関扉を抜けて繋がるシューズクローゼット周りを土足のまま進むと、天井が高くなり、側壁の開口から取られた柔らかい明るさを持った広がりのある土間空間に変化します。この土間が1階を端から端まで貫き、そこに直接面した形で子供部屋がありました。土間と部屋の間には壁や扉が無く、腰掛けの高さに設定された床段差が縁側的なイメージも与えます。まだお子さんが小さいため、あえて間仕切り壁などは設けず、将来的には分割を行なえる様なフレキシブルな平面形状と、設備の増設に対応した仕込みは行われているという、練り上げられた空間でした。小学校に上がる頃には、友達がたくさん集まっても大丈夫であろう広がりのあるワンフロアの遊び場が想像できました。

階段を登った2階はリビング、キッチンがある生活の中心フロアです。

大きく取られた開口から入る光と、間仕切りを極力排した間取りにより、室内の広さが感じられます。登ってきた階段を振り返ると、3階への階段は壁からスチールの支柱で支えられた、軽やかな踏み板が壁から跳ね出しています。部材の細さが軽さをさらに強調しており、上から落ちて来る光と絡み回転しながら上昇感を生んでいました。構造的には階段外周の壁内部に段板の支持部材が埋め込まれ隠さており、壁からは細い部材のみが取り付いており軽やかさが強調されています。菰田さん渾身のディテールでしょう。

内装は白色と木目がバランス良く配され、大きな開口から光の入る明るい生成りの空間でした。

その一角に2畳に満たないひときわコンパクトは暗がりのスペースがありました。これは篭り部屋で、明るさを抑えた小さな空間で、壁に囲まれた床全面に青を基調とした柄のクッションが敷き詰めらていました。

青いクッションと壁の篭り部屋 当初「子守り」部屋と記述しておりましたが、ご本人から「篭り」とのコメント頂きました(!)大変失礼致しました・・・。

これはお客様のアイデアを元に作られたそうで、クッションの柄もご自身で選ばれたそうです。その色柄に呼応する様に壁も青色に塗られた空間は、何とも落ち着ける「囲まれ感」がありました。空間は比較的明るさを考慮する事が多い中、あえて暗がりを作る所に、新鮮さとセンスの良さを感じました。

キッチンの背面に据え付けられた造作家具はオープンな収納になっていました。ここに一つずつお気に入りの食器や小物が並んでゆく事で、さらに素敵な家ができ上がる事が想像できる、住み手に寄り添った素敵なお宅でした。

「小さな離れ by 一級建築士事務所タスエス」 来訪記

建築家31会のお仲間である、一級建築士事務所タスエスさんが設計した「小さな離れ」のオープンハウスにお邪魔して来ました。2人組のタスエスさん、今回は松下さんがメインとなって進めた案件との事です。

杉並区善福寺の閑静な住宅地に計画された今回のお宅は、母屋の隣にある駐車スペース上部に設けられた「離れ」でした。道路と母屋が建つ地盤面の段差を上手く利用した離れは、庭レベルから四隅の柱で支えられ、地面から軽やかに浮いていました。道路に面した駐車スペース部分を抜けて(離れをくぐって)階段を数段上がり母屋の間の路地を抜けると、離れの奥庭がありました。これは土いじりがお好きな奥様が、さらに手を加えて行かれるとの事でした。

離れにはこの庭に面してデッキが設けられており、数段の鉄骨階段でアプローチします。このデッキには手摺を兼ねた小さなテーブル代わりになる膳板(?)が設けられていました。これは、デッキに腰かけて、お気に入りの庭をご覧になりながらお茶をするための仕掛けで、実際に腰掛けてみると、高さ関係が絶妙で、すっぽりと納まる感じがとても良くできていました。

松下さん自ら腰掛けてくれました(シャイなのでこちらは向いてくれませんでした(笑))

建物は四角の平面形状をしていますが、屋根部分がデッキ側にずれた形態をしています。庭を覆う様にデッキ上に掛かる屋根が、凝縮された空間により親密なまとまりを生み出している事を感じました。

離れの内部は、水廻りを備えた一部屋でした。

趣味の部屋としてご友人を招いてお過ごしになるとの事で、何ともうらやましい限りです・・・。ずらされた屋根と建屋の隙間にはガラスが嵌め込まれており、合板によって奇麗に納められた天井に、柔らかく外光が廻りこんでいます。

生成りでシンプルな形態が、屋根をずらすというコンセプトをより明快に表現していると感じました。小粒ながらピリッとパンチの効いた、タスエスさんならではのこだわりを感じさせる素敵な離れでした。

スカイツリーを見上げる併用住宅=NARIHIRA RECEPTION=

この投稿は建築家31会のブログリレー「ばとろぐ_2014/03/31」を一部加筆したものです。

今週のばとろぐを担当する石川利治です。今回は2012年3月に行った31人展vol.4でお知り合いになったS様と進めております[NARIHIRA RECEPTION]という案件のご報告を中心に進めて行きたいと思います。1週間、宜しくお願い致します。

すっかり春めいた陽気に、少し心も軽く感じる今日この頃ですが、思い起せばS様とお知り合いになってから、2年が経ちます。ご夫婦でどのように建物を作って行けば良いかをご検討されていた折に、たまたま模型展会場の前を通りかかってお立ち寄り頂き、会場でお声掛けさせて頂いたのが始まりでした。本当に偶然にお知り合いになる事ができ、さらに新築のお手伝いが出来るとは・・・何とも不思議な巡り合わせとご縁を感じます。

案件のイメージなどは以前のばとろぐで少し紹介致しましたが、改めて概要をご案内致します。

所在地:東京都墨田区

構 造:鉄骨造地上6階

用 途:住宅・倉庫・展示室(将来対応)

スカイツリーを見上げる敷地に計画されたショールーム(将来計画)と倉庫を併設する住宅です。家庭的なおもてなしを旨とするS様の企業理念が建物全体にちりばめられています。隅田川花火を正面に望むことのできる屋上は、開放的な接遇の空間になっています。

計画から施工者決定まで、約1年半掛かりましたが、昨年の秋に地鎮祭を取り行う事が出来ました。2014年の隅田川花火にはお引渡が出来る様に、鋭意建設中です。